日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 硫酸アルミニウム
英文名 Aluminum Sulfate

CAS 10043-01-3(無水物) (link to ChemIDplus)
別名 Aluminium sulphate

収載公定書  USP/NF(28/23) EP(5)(Aluminium sulphate)
用途 結合剤,賦形剤,溶解補助剤


JECFAの評価 (link to JECFA)
無毒性量はイヌで食餌中3%(リン酸アルミニウムナトリウム)であり、これは1250mg/kgに相当し、アルミニウムとしては110mg/kgに相当する。
ヒトの1週間当りの暫定値は7.0mg/kg bwである(食添として摂取するものを含む)。


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
マウス 経口 6200mg/kg Ondreicka et al., 1966 1)
ラット 経口 1500mg/kg Berlyne et al., 1972 1)
ラット 腹腔内 1100mg/kg Berlyne et al., 1972 1)

4種のアルミニウム化合物(硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、臭化アルミニウム)を、ラット及びマウスに経口又は腹腔内投与して14日間のLD50を測定した。死亡例の殆どは、最初の4日間で死亡した。症状としては嗜眠、活動性低下、起毛、体重減少、眼窩出血である。硝酸アルミニウムのLD50の用量を1回腹腔内投与、14日後の肝及び腎機能に異常は見られなかった。アルミニウムの濃度は肝、脾で最大であったが組織病理学的には障害は認められなかった。マウスについては、アルミニウム毒性に対し9種のキレート剤の効果を検討したところ、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸は効果があり、リンゴ酸及びコハク酸で最も効果的であった。メシル酸デフェロキサミン(DFOA)、サリチル酸ナトリウム、L-システイン及びクエン酸には解毒剤としての効果は見られなかった。アウリントリカルボン酸(ATCA)は毒性が強く、アルミニウムの解毒剤としては用いるべきではない。2) (Llobet et al., 1987)


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
1群5匹の正常又は部分的腎摘除(片側全部と反対側の2/3を摘除)ラットに、硫酸アルミニウムの1又は2%を飲料水に混入して投与した(アルミニウムとして150-375mg/kgに相当)。腎摘動物の場合、2%群では3日以内に、1%群では8日以内に全て死亡した。臨床症状としては眼窩周囲の出血、嗜眠、食欲不振が見られた。この間、正常動物ではアルミニウム含有水を与えても死亡例はなく、眼窩周囲の出血も2/3のラットに見られたに過ぎない。1) (Berlyne et al., 1972)

SD系雄性ラットに硫酸アルミニウムを飲料水に混入して30日間与えた。アルミニウムは固質化(consolidation)及び受動回避反応の消失を阻害した。能動回避反応、多腕迷路及び開放野での活動性は阻害されなかった。生化学的には海馬のムスカリン受容体が軽度増加し有意であった。コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性、ホスホイノシチドの加水分解、皮質の3H-QNB結合又は海馬・皮質における3H-PZの結合には変化なかった。これらの結果は、コリン作動性の異常が認識障害の原因ではないことを示唆している。3) (Conner et al., 1988)

SD系雄性ラットに硫酸アルミニウムを飲料水に混入して30日間与えたところ、受動回避反応の消失日数の低下が見られた(対照の38%)。 この低下は摂水量の低下に基づく非特異的なものではない。試験の2週間前にアルミニウムの投与を中止すると部分的に回復する。アルミニウムのキレート剤であるデフェロキサミンを注射すると用量依存的に対象レベルまで回復する。開放野での活動性には異常は見られなかった。これらの結果は、行動的な障害はアルミニウム投与による特異的且つ可逆的な毒性作用によることを示唆している。4) (Conner et al., 1989)

SD系雄性ラットに、硫酸アルミニウムの0、0.25、0.5又は1%を飲料水に混入して与えた。30日後に麻酔下に脊椎弓のT7-8部位を切除して35gを負荷した圧縮プレートを脊髄の上に5分間置いた。対照群にも同様の処置を施したが加圧障害は生じなかった。脊髄圧迫は一過性の対不全麻痺を生じた。運動性の最大欠如は脊髄損傷後1日目に起こり、回復には10日以上を要した。アルミニウムの投与は脊髄損傷後の回復を阻害した。生化学的、電気生理学的及び病理組織学的な分析の結果、アルミニウムは脊髄損傷からの回復に悪影響をもたらすことを確認した。5) (Al Moutaery et al., 2000)

白色雄性ラットに硫酸アルミニウムを35日間胃管を用いて経口投与した。アルミニウム(Al)投与群では対照に比べ脳中Alのレベルは高かった。グルタミン酸とグルタミンの著明な増加とGABAの有意な減少がみられた。脳組織における最も顕著な変化は、ニューロンの海綿体様変化(特に海馬領域)、核の異常、神経原線維の変性であり、これらはアルツハイマー病における神経原線維の線維濃縮体に類似する。6) (El-Rahman et al., 2003)

ニワトリ
幼若鶏におけるアラム(aluminum sulfate)の腸管強度(intestinal strength)増強作用と毒性を評価するために2回の実験を行った。雄のヒヨコに0、0.23、0.47、0.93、1.9又は3.9%のアラム混餌食を生後1-3週間摂取させた。体重の有意な低下が、実験@では1.9%以上の群で、実験Aでは0.93%以上の群で見られた。砂嚢の比体重は両実験とも3.7%群で増加した。血清中のリン(P)は、実験@の1.9%以上の、実験Aでは3.7%の群で減少。小腸及び骨強度は両実験共に3.7%群で低下した。骨灰(bone ash)は実験Aの3.7%群で減少、骨のイオウ(S)は、実験@の1.9%以上の、実験Aでは3.7%の群で、アルミニウム(Al)は両実験共に3.7%群で上昇した。3.7%群で筋肉のP、Sは低下、Caは増加し、Alは増加しなかった。7) (Huff et al., 1996)

その他
硫酸アルミニウムの50μmole/kgを腹腔内に1週間に5日、3ヶ月間投与した。ヘモグロビン量は対照群の32%、ヘマトクリットは同24%と有意な低下が見られた。血清鉄も有意に低下したが総鉄結合能には変化は見られなかった。肝、腎及び脳のδ-ALA-Dにも変化は見られなかった。血清、肝、腎、脳のホモジネートでTBA反応陽性物質に関するパラメーターにも変化はなかった。肝中のアルミニウム濃度は全ての群で対照群に比し高値を示したが、腎及び脳のそれは群間に差はなかった。8) (Farina et al., 2002)


遺伝毒性 (link to CCRIS)
ラットに硫酸アルミニウムを長期間経口投与した結果、用量依存的な分裂細胞の抑制、染色体異常の増加が見られた。これは投与期間によって影響されなかった。9) (Roy et al., 1991)

ラットに硫酸アルミニウム又は硫酸アルミニウムカリウムを長期間投与すると、用量依存性に骨髄の分裂細胞の抑制、染色体異常の増加が見られた。染色体異常はラット、マウス、チャイニーズハムスターの腹腔内細胞においてもヒト白血球培養におけると同様、誘起される。10) (WHO, 1997)


がん原性
該当文献なし


生殖発生毒性 (link to DART)
実験@では妊娠マウスに、硫酸アルミニウムの200mg/kg又は生理食塩水を妊娠10-13日に腹腔内注射した。実験Aでは硫酸アルミニウムの750mg/Lを飲料水に混入して妊娠10-17日に与えた。新生仔は3-44週間に亘って屠殺し、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性を測定した。新生仔は生誕1日目に交叉飼育し、行動学的及び発育学的な種々の検討を行った。10週目には雄で迷路試験を行い、22週では成獣としての種々の活性を測定した。その結果、コリン作動性システムは脳の種々の領域で特異な影響を受けた。脳の各所で見られた影響の大きさに対する腹腔内投与と経口投与の相違は、投与方法の差を如実に反映している。離乳前のマウスにおける成長率及び随意運動の成熟性は腹腔内投与群にのみ影響が認められ、著しい生後に対する母体効果を示している。11) (Clayton et al., 1992)

妊娠ラットに、硫酸アルミニウムの0.3、1.0又は3.0%を飲料水に混じて妊娠初日から出産まで投与した。出産直後に新生仔の体重及び体長を測定し、形態学的な異常を注意深く観察した。新生仔は代理母獣に飼育させ、耳介開裂、眼瞼開存、切歯萌出、被毛出現等の発達状況を観察した。神経行動学的な検査は発声反応、聴覚反射、角膜反射、正向反射、握力、協同運動、嗅覚、帰巣本能等で行った。その結果、発声反応、正向反射の遅延及びroto-rod testのpoor performanceが見られた。これらの所見は母体にアルミニウムを曝露した場合、新生仔の神経行動学的な発達に影響を与えることを示唆している。12) (Tariqu et al., 1994)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
1日齢の雄性白色レグホンを用い、硫酸アルミニウムの200又は400mg/kgを15日間混餌投与し、最終投与24時間後に脳組織を分析に供した。 一方、1及び56日齢の脳組織ホモジネートに種々の濃度の硫酸アルミニウムを添加し、in vitroにおける脂質過酸化に対する影響をTBA反応で検討した。 56日齢のものでは1日齢のものに比し、より多くのTBA反応物の生成が見られた。アルミニウム(Al)依存性の過酸化は1日齢では100μgの、56日齢では500μg添加時にのみ認められた。過酸化反応は15分以内に明白となり30分後に最大となった。1mmoleのAlを用いた際のTBA反応物は、インキュベーション30分後の蛋白濃度と正の直線関係にあった。15日間Alを摂取させたものでは、体重、身長、脳重量に変化はなく、内因性TBA反応物、遊離SH基、脳蛋白量にも変化は見られなかった。13) (Chainy et al., 1993)


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
19名の青年男性労働者(1975-77年まで工場でフッ化アルミニウム又は硫酸アルミニウムを吸引暴露)が就職後平均4ヶ月で可逆性の気道閉塞を伴った夜間の喘鳴、息切れをするようになった。正常な肺活量を有する19名のうち17名は、標準的なメタコリン誘発試験(MPT)で、FEV1の15%以上の低下を伴った気道過敏症を呈した。最初から喘息を有する15名については2-5年間MPTで追跡した。その結果、非曝露期間平均41ヶ月後の11名においても、48ヶ月間暴露を続けた6名においてもFEV1(TD15%FEV1 MCh)に有意な変化は認められなかった。1983年に1名のみ気道過敏性が正常に回復した。14) (Simonsson et al., 1985)

1988年7月に北コーンウオ―ル州で、硫酸アルミニウムが地方の水供給施設に混入する事件が発生し、妊娠に及ぼす影響を調査した。当域の妊婦92名について二つの対照群と比較した。対照群の一つは事故発生前の妊娠例68名、他の一つは近隣の妊娠例193名である。3群全ての中で流産13例、死産5例、生誕数336例であった。硫酸アルミニウムに曝露された妊娠88例の内、周産期死亡例なし。出生時の体重低下3例、早産4例、重症先天性奇形はゼロであった。しかし、湾曲足の発生は4例であり、対照群の1例に比し有意な増加であった。結論として、少数例での結果であり高用量の硫酸アルミニウムが妊娠において安全であるとは言い切れない。しかしまた、今回の結果から生誕時に重大な問題が明らかであるとの確証もない。15) (Golding et al., 1991)


引用文献
1) WHO Food Additive Series 24 The 33rd meeting of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives(JECFA), Geneva, 1989
2) Llobet JM, Domingo JL, Gomez M, Tomas JM, Corbella J. Acute toxicity studies of aluminium compounds: antidotal efficacy of several chelating agents. Pharmacol. Toxicol. 1987; 60(4): 280-3
3) Conner DJ et al., Pharnmacol.Biochem. Behav. 1988; 31(2): 467-74
4) Conner DJ et al., Behav. Neuro. Sci. 1989; 103(4): 779-83
5) Al Moutaery K et al., J. Neurosurg. 2000; 93(2 suppl): 276-82
6) El-Rahman SS. Pharmacol.Res. 2003; 47(3): 189-94
7) Huff WE, Moore PA Jr, Balog JM, Bayyari GR, Rath NC. Evaluation of the toxicity of alum(aluminum sulfate) in young broiler chickens. Poult Sci. 1996; 75(11): 1359-65
8) Farina M et al., Toxicol. Lett. 2002; 132(2): 131-9
9) Roy AK, Sharma A, Talukder G. Effects of aluminium salts on bone marrow chromosomes in rats in vivo. Cytobios. 1991; 66(265): 105-11
10) WHO. Environ. Health Criteria 194; Aluminum (1997)
11) Clayton RM et al., Life Sci. 1992; 51(25): 1921-8
12) Tariqu M et al., Neurobiol Aging 1994; 15(suppl 1): S19
13) Chainy GBN et al., Bull.Environ. Contam. Toxicol. 1993; 50(1): 85-91
14) Schmidt SH et al., Eur. Arch Otorhinolaryngol 1990; 248(2): 87-94
15) Simnsson BG, Sjoberg A, Rolf C, Haeger-Aronsen B. Acute and long-term airway hyperreactivity in aluminium-salt exposed workers with nocturnal asthma. Eur. J. Respir. Dis. 1985; 66(2): 105-18
16) Golding J, Rowland A, Greenwood R, Lunt P. Aluminium sulphate in water in north Cornwall and outcome of pregnancy. Brit. Med. J. 1991; 302(6786): 1175-7




   



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