和名 アミノ安息香酸エチル
  英文名 Benzocaine
  
  CAS 94-09-7  
		  (link to 
		  
		  ChemIDplus),(link to
		  
		  JAN DB), 
		  (link to 
		  JANe DB)
  別名 アネスタミン、ベンゾカイン
  収載公定書  局方(JP17) USP/NF(28/23)(Benzocaine)  EP(5) (Benzocaine)
  用途 無痛化剤
  
  
■単回投与毒性 
		  (link to
		  
		  ChemIDplus)
   
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     動物種 
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     投与経路 
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     LD50 
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     文献 
     | 
   
   
    | 
     マウス 
     | 
    
     腹腔内 
     | 
    
     216 mg/kg 
     | 
    
     Fitzelald,
    1974 1) 
     | 
   
   
    | 
     ウサギ 
     | 
    
     経口 
     | 
    
     1150 mg/kg 
     | 
    
     日本医薬品集,1982 
     | 
   
  
  
  
  ■反復投与毒性 (link to
  
  TOXLINE)
  ■がん
原性
  ■生殖発生毒性 (link 
  to
  
  DART)
  ■遺伝毒性
  
  
  ■局所刺激性
  モルモット10匹の皮膚に50%ベンゾカイン溶液(アセトン/PEG400)を48時間閉塞貼付した結果,軽微な刺激性が認められた。モルモット4匹に同じ溶媒の10%ベンゾカイン溶液を24時間閉塞貼付した場合には,刺激性は認められなかった。
  2) (Kimber et al., 1991)
  
  マウス10匹の皮膚に15%ベンゾカイン溶液(アセトン水/Tween 80)を開放塗布した結果,刺激性は認められなかった。
  3) (Maisey & Miller, 1986)
  
  ■その他の毒性
  Sprague-Dawleyラット雌雄に20%ベンゾカイン含有Americaine軟膏をポリエチレンカテーテルの潤滑のために用いて実験を実施している。この軟膏0.1
  mLをラットの皮下に投与して10分後に採血してメトヘモグロビン濃度を求めた結果,対照群と比較して0.8%〜28.5%の上昇が認められた。 4)
  (Englebach & Harp, 1986)
  
  被験物質の感作性ををモルモットのマキシミゼーション皮膚感作性試験変法で評価した。アジュバントと生理食塩液混液各0.1 mLをPribright白色モルモットの頸部皮膚に4回皮内投与を行った。24時間適用した1週間後に被験物質は白色ワセリンに混ぜ,を皮内投与部位に48時間適用して刺激性を惹起しない最高濃度
  を調べた。さらに1週間後に刺激性のない最高濃度でモルモットの側腹部に24時間 被験物質を適用して24,48時間目に適用部位の紅斑,浮腫の程度を評価した。被験物質は2,4-dinitrochlorobenzene
  (DNCB), p-phenylenediamine (PPDA),
  1-(3-chlorophenyl)-3-(4-chlorophenyl)-2-pyrazoline (2CPY), formaldehyde, ベンゾカイン,
  penicillin-G, benzyl-salicylat,
  potassium-dichromate, isoeugenolについて調べた結果,全ての9物質は陽性を示し,DNCB,
  2CPY, PPDA, formaldehyde, ベンゾカイン, penicillin-Gの程度は標準法と同等であった。 5) (Mauet et al., 1989)
  イヌの掻痒性皮膚治療のためにベンゾカインを含有する製品をイヌ3匹に局所適用した結果,メトヘモグロビン血症を惹起した。この製品はヒト用に販売されているものであった。イヌ2匹には,5%ベンゾカイン含有の皮膚ローションを適用後2−3時間でショック状態に陥った。1匹でメトヘモグロビンを測定した結果,総ヘモグロビンの51%を占めた。イヌ2匹は全量血液交換後に回復した。3番目のイヌには,20%ベンゾカイン含有の麻酔作用のあるエアゾール少量を数週間処置したところ,食思不振,昏睡状態となった。メトヘモグロビン含量は30%を示し,ハインツ小体が赤血球の20%に認められた。そのスプレイを中断すると速やかにメトヘモグロビンとハインツ小体は消退した。このメトヘモグロビン血症を惹起させたベンゾカインを含有する2種類の製品を臨床的に健常で皮膚に損傷のないイヌに与えてもメトヘモグロビンの増加は検出できなかった。また,これらの製品を健常なイヌに経口投与したところ,メトヘモグロビン含量のわずかな増加は認められた。このことから,メトヘモグロビン血症を惹起したイヌ3匹の皮膚には何らかの傷害があり,ベンゾカインの吸収が促進された結果,メトヘモグロビンが生成されたものと考えられた。
  6) (Harvery et al., 1979)
  ■ヒトにおける知見 (link to
  
  HSDB)
  ベンゾカイン(アミノ安息香酸エチル)は内視鏡検査の前に皮膚,粘膜の局所麻酔を目的として一般に用いられる局所麻酔薬である。メトヘモグロビン血症(一般に酸素と結合して運ぶことができないヘモグロビン)がベンゾカインを適用した患者で認められている。これは,ベンゾカイン惹起メトヘモグロビン血症が健常な被験者で認められた最初の報告である。本被験者では27%のメトヘモグロビン含量がみられ,著明なチアノーゼを示した。チアノーゼ以外の有害な続発症は認められなかった。これらの結果から約30%メトヘモグロビン濃度は健常被験者における耐量とみなされた。
  7) (Kuschner et al., 2000)
  
  食道からの心エコー図検査前処置した2例でベンゾカイン惹起メトヘモグロビン血症を認めたので報告する。2例ともメチレンブルーの静脈内投与によりチアノーゼは消退した。
  8) (Sachdeva et al., 2003)
  
  ベンゾカインによると考えられる4ヵ月齢男児死亡例を報告する。検死時ベンゾカイン濃度は3.48 mg/Lでメトヘモグロビン濃度は36%(正常値は0.4-1.5)であった。メトヘモグロビン血症はベンゾカイン毒性によるとみなされた。検視官は毒性徴候からみてベンゾカインの供給源を幼児に適用したZenith社Goldline allergen ear dropsと特定し,これにはベンゾカイン0.25% w/v,antipyrine 5.4% w/vが含まれた。幼児は死亡前に看護師により処方量の3倍量を適用された。その他のベンゾカインに依存しない死亡例における血中ベンゾカイン濃度は<0.05〜5.3
  mg/L(平均1.48 mg/L)であった。9例中7例は薬物乱用者で,1例は良く知られた薬物常習者であった。ベンゾカイン陽性例のメトヘモグロビンは6〜69%で,検死時にはメトヘモグロビン濃度は上昇する傾向があり,診断時には注意が必要となる。
  9) (Logan et al., 2005)
  
  被験者200名を用いて標準パッチ法で化学物質の刺激性を調べた結果,ベンゾカイン5%パッチで陽性を示した。10) (Duarte et
  al., 2002)
  
  妊娠16週までにベンゾカインを投与した47人,もしくは妊娠中にいつでもベンゾカインを投与した238人の婦人の子において,先天異常の発現率の増加が認められた。11)
  (Heinonen et al., 1977)
  
  母親への局所麻酔としての使用において,胎児への影響はなさそうである。ヒトの催奇形性発現の危険性は低いものと考えられている。12)
  (Friedman, 1988)
  
  
  ■引用文献
  1) J. Med. Chem., 1974; 17: 900-902   (link to 
  
		  PubMed)
  2) 
  Toxicol. Letters, 1991; 55: 203-213   (link to 
  
		  PubMed)
  3) 
  Contact Dermatitis,
  1986; 15: 17-23   (link to 
  
		  PubMed)
  4) Anesthesiology, 1986; 64: 132   (link to 
  
		  PubMed)
  5) Food
  Chem. Toxicol., 1989; 27: 807-811  (link to 
  
		  PubMed)
  6) J Am Vet Med Assoc., 1979; 175: 1171-1175 (link to
  
		  PubMed)
  7) Respir. Care, 2000; 45: 953-956  (link to 
  
		  PubMed)
  8) Tex Heart Inst J. 2003;
  30: 308-310 (link to
  
		  PubMed)
  9) J Forensic
  Sci., 2005; 50: 1486-1488  (link to
  
		  PubMed)
  10) Am. J.
  Contact Dermatitis, 2002; 13: 125-132  (link to
  
		  PubMed)
  11) Heinonen OP et al: In Birth defects and drugs
  in pregnancy. Edited by Kaufman DW, Publ Sci Group, Inc, Littleton, MA, 1977, 357-65
  12) Teratology 37: 69-77,
  1988.  (link to
  
		  PubMed)
  
  		■Abbreviation    
  
  		ChemIDplus; ChemIDplus DB in TOXNET, 
  CCRIS;Chemical 
		  Carcinogenesis Research Information System , 
  DART; 
		  Developmental Toxicology Literature
		  
		  
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