日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 トリエチレングリコール
英文名 Triethylene Glycol

CAS 112-27-6 (link to ChemIDplus)
別名 
収載公定書  薬添規(JPE2018) 外原規(2006)
用途 基剤


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
Fisher 344ラットを用い、トリエチレングリコール(TEG)の14日投与による予試験及び90日間投与による亜慢性毒性試験を行った。投与はいずれも混餌で行い、その濃度は0、10000、20000又は50000ppmである。これは14日間投与では夫々雄で0、1132、2311、 5916mg/kgに、雌で0、1177、2411、6209mg/kgに相当する。90日間投与では夫々雄で0、748、1522、3849mg/kgに、雌で0、848、1699、4360mg/kgに相当する。

14日間投与では死亡例はなく、臨床徴候も見られなかった。体重、血液学的、血清生化学的検査、臓器重量及びそれらの肉眼的、組織形態的観察で影響はなかったが、高用量群では雌雄共に摂餌量の増加及び尿量の増加、pHの低下が見られた。
尿量の増加は雄の中用量群でも見られた。90日間投与においても死亡例はなく、毒性徴候も見られなかった。臓器の肉眼的、組織形態的観察では用量依存性の変化はなかった。体重は高用量群の雌雄で減少した。体重増加は雌雄とも全ての群で抑制された。血液学的所見では雌では異常は見られなかったが雄では中、高用量群で赤血球数、ヘマトクリットの軽度低下が、高用量群でヘモグロビンの低下が見られた。
尿検査では用量依存性のpHの低下が見られ、尿量の増加は主として高用量群で明らかであった。以上、TEGは亜慢性的投与によっても局所的又は臓器特異的な毒性を示さない。これらの知見は既知のエチレングリコール及びジエチレングリコールの反復経口投与による毒性(特に腎毒性)と対照的である。TEGは、より低分子量の同族体に比し経口投与による毒性は有意に弱い。1) (Van Miller & Ballantyne, 2001)


遺伝毒性 (link to CCRIS)
Toxinet 資料
試験 試験系 濃度 結果 文献
復帰突然変異
代謝活性化なし
サルモネラ菌TA98
TA100,TA1535
TA1537,TA1538
100-10000μg/plate
preincubation
陰性 Japan Chemical Industry
Ecology -Toxicology and
information center 1996 2)
復帰突然変異
代謝活性化
(ラット肝 S-9
Phenobarbital &
β-naphthoflavone)
サルモネラ菌TA98
TA100,TA1535
TA1537,TA1538
100-10000μg/plate
preincubation
陰性 Japan Chemical Industry
Ecology -Toxicology and
information center 1996 2)
復帰突然変異
代謝活性化なし
大腸菌WP2 uvrA 100-10000μg/plate
preincubation
陰性 Japan Chemical Industry
Ecology -Toxicology and
information center 1996 2)
復帰突然変異
代謝活性化
(ラット肝 S-9
Phenobarbital &
β-naphthoflavone)
大腸菌WP2 uvrA 100-10000μg/plate
preincubation
陰性 Japan Chemical Industry
Ecology -Toxicology and
information center 1996 2)



がん原性
該当文献なし


生殖発生毒性 (link to DART)
マウス
Swiss SD-1マウスに、トリエチレングリコール(TEG)、トリエチレングリコールジアセテート(TGD)又はトリエチレングリコールジエチルエーテル(TGDME)を飲料水に混じて与え、繁殖機能に及ぼす影響について検討した。被検物の濃度は、TEG:0、0.3、1.5、3%、TGD:0、0.75、1.5、3%、TGDME:0、0.25、0.5、1%である。これら各検体を1群雌雄各20匹の同居ペアーに98日間投与した。
対照群には雌雄各40匹の同居ペアーを用いた。繁殖機能は各ペアー当りの出産回数、1出産当りの生仔数、生仔生誕率、生仔体重で評価した。
TEG、TGDは濃度を3%まで上げても繁殖機能に明らかな影響は見られなかった(夫々6.78、5.45g/kgに相当)。しかし、TEG1.5又は3%群のペアーから生まれた生仔の生誕時体重は対照群、TEG0.3%群に比し有意に低く、TGD3%群からの出産仔は生後14及び21日目の授乳期体重は有意に低かったが、可逆性であった。これに対しTGDMEでは1出産当りの生仔数、生仔生誕率の低下は用量依存傾向があり、1%群(1.47g/kgに相当)においては少なくとも1回の出産を経験したペアーの比率の低下を含め、明らかに繁殖毒性が認められた。クロスオーバー交配による結果、TGDMEは雄よりは雌で繁殖毒性はより強かった。
これらのデータはTGDME(1.47g/kg)はSwissマウスに対し繁殖毒性を有していることを示している。一方、TEG及びTGDは最高用量(夫々6.78、5.45g/kg)においても明らかな繁殖毒性は認められなかった。3) (Bossert et al., 1992)

CD-1系妊娠マウスに、トリエチレングリコール(TEG)の0、563、5630又は11260mg/ kg/dayを妊娠5-15日に胃管を用いて経口投与した。妊娠18日目に母獣を剖検し、母獣については体重、子宮、肝、腎重量を測定し、着床部位を観察した。腎については組織学的な検査も行った。胎仔については体重、性別、奇形及び骨格変異等を観察した。
高用量の11260mg/kg群では、母獣に臨床徴候及び腎の相対重量の増加が見られたが、腎の組織像は正常であった。黄体、着床には被検物投与の影響は見られなかった。胎仔体重は5630mg/kg以上の群で低下し、それに伴って11260mg/kg群では前頭骨、後頭骨、頚椎骨、後肢指基節骨の、5630mg/kgでは頭骨の化骨遅延が見られた。いずれの用量においても生物学的に意味ある胎仔毒性及び催奇形性は認められなかった。
器官形成期に投与したTEGのマウスにおける最大無作用量(NOEL)は、母獣に対しては5630mg /kg、胎仔に対しては563mg/kgであった。4) (Ballantyne & Snellings, 2005)

ラット
CD系妊娠ラットに、トリエチレングリコール(TEG)の0、1126、5630又は11260mg/kg/ dayを妊娠5-15日に胃管を用いて経口投与した。妊娠21日目に母獣を剖検し、母獣については体重、子宮、肝、腎重量を測定し、着床部位を観察した。腎については組織学的な検査も行った。胎仔については体重、性別、奇形及び骨格変異等を観察した。高用量の11260mg/kg群では、母獣に体重減少、摂餌量及び体重増加の抑制、摂水量の増加、腎相対重量の増加が見られた。
体重減少と摂水量の増加は中用量の5630mg/kg群でも見られた。腎の組織像は正常であった。黄体、着床には被検物投与の影響は見られなかった。胎仔体重は高用量群で低下し、それに伴って胸部の化骨遅延が見られた。いずれの用量においても生物学的に意味ある胎仔毒性及び催奇形性は認められなかった。器官形成期に投与したTEGのラットにおける最大無作用量(NOEL)は、母獣に対しては11260mg/kg、胎仔に対しては5630mg/kgであった。4) (Ballantyne & Snellings, 2005)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
誤用
トリエチレングリコール(TEG)を摂取して代謝的酸血症(metabolic acidemia)を呈し、エタノール投与により治療した症例報告。22歳の女性で、TEG(99%)で抽出した蕨液(brake fluid)を急飲して昏睡と代謝的酸血症(pH:7.03、PCO2:44mmHg、重炭酸塩:11mmol/L、陰イオンギャップ:30mmol/L、血清クレアチニン:mμmol/L)を来たし、1-1.5時間後に救急部に搬入された。直ちに重炭酸ナトリウム100mmolを点滴静注された。次いでエタノールを血中濃度として100mg/dL維持できるよう持続点滴静注した。
酸血症は8時間に亘って徐々に回復し、12時間後には抜管した。エタノールの点滴は合計22時間続けた。酸血症の再発は見られなかった。搬入時点で血中のエタノール、エチレングリコール、メタノールはサリチル酸と同様、検出されなかった。誤用薬物スクリーニングと薄層クロマトグラフィーで尿には他物質は検出されなかった。患者は誤飲後36時間で解放された。結論として、純粋のTEG中毒では昏睡と酸血症を来たすがエタノールのようなアルコール脱水酵素阻害剤で治療可能である。5) (Vassiliadis et al., 1999)


引用文献
1) Van Miller JP, Ballantyne B. Subchronic peroral toxicity of triethylene glycol in the Fischer 344 rat. Vet. Hum. Toxicol. 2001; 43(5): 269-76
2) Japan Chemical Industry Ecology -Toxicology and Information Center, Japan Mutagenicity Test Data of Existing Chemical Substances based on the Toxicity Investigation of the Industrial safety and Health Law; 1996
3) Bossert NL, Reel JR, Lawton AD, George JD, Lamb JC 4th. Reproductive toxicity of triethylene glycol and its diacetate and dimethyl ether derivatives in a continuous breeding protocol in Swiss CD-1 mice. Fundam. Appl. Toxicol. 1992; 18(4): 602-8
4) Ballantyne B, Snellings WM. Developmental toxicity study with triethylene glycol given by gavage to CD rats and CD-1mice. J.Appl.Toxicol. 2005; 25(5): 418-26
5) Vassiliadis J, Graudins A, Dowsett RP. Triethylene glycol poisoning treated with intravenous ethanol infusion. J.Toxicol. Clin. Toxicol. 1999; 37(6): 773-6.


   

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