日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 炭酸アンモニウム
英文名 

CAS 506-87-6  (link to ChemIDplus), 8000-73-5 (link to ChemIDplus)
別名 
収載公定書  薬添規(2003) 外原規(2006)
用途 賦形剤 


単回投与毒性:506-87-6  (link to ChemIDplus)
反復投与毒性:506-87-6  (link to TOXLINE)
毒性研究
短期間研究
ラット
5匹の離乳したばかりのHolbrookラット(性別は明示されていない)の群に、5週間、食餌に入れて0と5%の炭酸アンモニウムを与えた。限られた研究のパラメーターが検査された。成長の減退とBUNの上昇が生じた。(Finlayson & Baumann,1956)

6匹のSprague-Dawleyラット(225g-275g、性別は明示されていない)の群に、5日間、飲水か胃管によって、0または1.28g/kg/日の炭酸アンモニウムを与えた。投与に関連する腎臓の肥大が観察されたが、腎臓の放射性のあるチミジンの摂取の増加は起きなかった。これは腎臓肥大の間、DNA合成あるいは細胞の分裂の促進が起きないということを暗示している。その他には投与に関連した影響は観察されなかった。(Janicki,1970)

6匹の雌のHoltzmanラット(200g-250g)の群に、7日間、0または1.5%の炭酸アンモニウムを飲み水に入れて与えた。腎臓のDNAとRNAの総量が増加することを伴って、腎臓肥大が観察された。その他には投与に関連した影響は報告されなかった。同じような影響が、6日間、0または3%の炭酸アンモニウムを食餌に入れて与えられたラットのもう一つの実験でも観察された。(Thompson & Halliburton,1966)

7匹から12匹の雄の成熟Sprague-Dawleyラットの群に、330日間、0または1.5%の炭酸アンモニウムを飲み水に入れて与えた。同じ研究室の同時に行った研究では、5匹から9匹の類似した動物の群に、6ヶ月間、0または2%の炭酸アンモニウムを飲み水に入れて与えた。動物は骨の有機物質とミネラルの喪失によって骨粗鬆症になった。成長の減退も投与された動物に起きた。炭酸アンモニウムによって生じた骨粗鬆症は、重炭酸塩の補充で治ったが、カルシウムの補充では治らなかった。(Barzel & Jowsey,1969;Barzel, 1969)

ウサギ
5〜7匹の雌のチンチラ(生後8から14ヶ月)の群に、5ヶ月から16ヶ月のいろいろの期間、0と100-200r/kgの炭酸アンモニウムを胃管によって与えた。3週間与えて1週間与えないというサイクルで、検体は隔日に与えられた。投与に関連して、乳汁分泌、卵胞と黄体の増殖と同じように、副腎、卵巣、乳腺と子宮の腫大が生じた。これらの影響は投与に関連したアシドーシスによって刺激された下垂体のgonadotropin生産の増加に起因した。(Fazekas,1949)

同じ研究室で類似した研究が、6匹の雄と雌のチンチラ(生後8から10ヶ月)の群で行われた。この群に、5ヶ月から26ヶ月の範囲で、0と0.1-0.2g/kgの炭酸アンモニウムを飲み水に入れて与えた。投与サイクルは3週間投与し、その後検体を与えずに1週間とした。著しい影響は副甲状腺の肥大だけだった。(Fazekas,1954b) 

ウサギに、1〜17ヶ月の間で、胃管で0と83-200mg/kgの水酸化アンモニウムを与えた。腎臓と卵巣と副甲状腺の肥大が記録され、同時に甲状腺機能亢進症でもあった。(Fazekas,1939,1949,1954a)

9匹のウサギ(性別と血統は明示されていない)の群に、4週間、毎日0.6-1.0gの炭酸アンモニウムを胃管で与えた。血清のCo2に20から30%の減少が観察された。ほかにはアドバースな影響は報告されなかった。(Jobling &Meeker,1936)

9匹の平均2kgの体重のウサギの群に、11日間から11ヶ月の間、16.6gから166gの範囲で胃管によって炭酸アンモニウムを与えた。6匹の対照群を使った。重篤なアチドーシスが認められ、尿に円柱とアルブミンが出現した。腎の組織学的検査では曲網管の急性変性像と著明な核濃縮が見られた。これらの影響はこのアシドーシス招来性食餌を中断することで可逆性であった。(Seegal,1927)

イヌ
4匹の雄の雑種のイヌに、7日間、カプセルで毎日6gの炭酸アンモニウムを食べさせた。5匹目のイヌを対照群とした。尿中、酸度とアンモニアの増加が観察された。ほかの投与に関連した影響は報告されなかった。(Pollak et al.,1965)

もう一つの研究では、雑種の成犬(1dog/treatment level)に、7日間、カプセルで、0、25.5、45.6、91.0または170.0mg/kgの炭酸アンモニウムを与えた。軽度の酸血症を伴って、投与に関連した尿pHと比重の減少が観察された。(Short & Hammond,1964)


ヒトにおける知見:506-87-6  (link to HSDB)
炭酸アンモニウムについて、1週間未満の臨床研究が行われた。1つの報告書では、ヒトに3日間食事に混ぜて62gの炭酸アンモニウムが与えられた。赤血球数の増加、BUNの増加、血漿pH(Guest & Rapoport,1940)の減少を除いて、影響は報告されなかった。もう1つの研究では、3名の若いヒトに、3〜5日間以上、52から105gの範囲で飲水に入れて炭酸アンモニウムを与えた。頭痛、不眠、吐き気、下痢が尿の酸度とアンモニアの増加を伴って起きた。グルコース耐性の減少も認められた。ブドウ糖摂取に続く高血糖、緩徐な空腹時血糖値への戻りから成る。(Thompson et al.,1933)

妊娠した女性(6人は普通、8人は妊娠中毒症、3人は高血圧)に、3日間、飲み物に入れて15g/日の炭酸アンモニウムを与えた。投与された女性は、hyperventilation、食欲不振、のどの渇きの減少、吐き気、体重の減少を経験した。ヘマトクリットは増加した。一方、尿中の炭酸、カリウム、酸度と量はすべて増加し、血液のpHとCo2は減少した。(Assali et al.,1955)

6から9日間、毎日6-8gの炭酸アンモニウムを経口投与された21歳から38歳の11名のリウマチ関節炎に悩む年齢を明示していない5人の女性がこの研究に雇われた。彼女らに23から33日間、試験混合物を与えた。若干の体液喪失が認められたが、ほかのアドバースな影響は報告されなかった。(Owen & Robinson,1963;Jacobson et al.,1942)

23〜37歳の3人の女性と3人の男性に、5日間毎日、8gの炭酸アンモニウムを経口投与した。投与された群はマグネシウム、カルシウム、リン酸の尿中排泄の増加と尿中pHの減少を経験した。ほかの炭酸アンモニウムに帰する影響はなかった。これらの結果は、カプセルで0.1kgの炭酸アンモニウム(Martin & Jones,1961)を与えられた年齢を明示しない18人の男性と6人の女性の24時間の研究で、確証された。(Lavan, 1969)

中年、またそれより年老いた4,5人の患者に毎日8gの炭酸アンモニウムを経口投与した3日間の研究で、アドバースな影響は報告されなかった。(Jailer et al.,1947)

22〜60歳の13人の女性と2人の男性に、3ヶ月間の間に1ヶ月連続して20日間、3g/日の炭酸アンモニウムを経口投与した。食欲と脂肪沈着の増加が認められ、著者は処置に関連するアチドーシスとそのための別腎皮質機能の亢進のためとしている。(Fazekas,1955).

遺伝毒性:506-87-6  (link to CCRIS)
毒性研究
変異原性試験における特別研究
重炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムの変異原性を、活性化有無の条件で微生物分析系(プレートおよび懸濁胞)で調べた。酵母一種(Saccharomyces cerviae)およびネズミチフス菌3種により、陽性・陰性対照を用いて試験した。どの化合物も使用した分析系で変異原性を示すものは無かった(Litton Bionetics,1975,1977)

繁殖と奇形の特別研究
マウス
24、21、22、23、30匹の妊娠した異系交配CD-1のマウスに、それぞれ0、6、27、125、580mg/kgの重炭酸ナトリウムを妊娠6〜15日の間胃管で与えた。類似した研究は、同じ研究室で、炭酸ナトリウムと炭酸カリウムでも行われた。投与に関連したアドバースな影響は、処置群にも対照群にも見られなかった。(Food & Drug Research Lab., 1973b,1975)

ラット
220,20,21,21および22匹の妊娠ウィスターラットに0,3.4,15.8,73・3および340mg/kgの重炭酸ナトリウムを毎日胃管で妊娠6〜15日の間投与した。同じ研究室で炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの同様の試験を実施した。着床あるいは母獣および胎児生存に処置に関連するアドバースな影響は認められなかった。骨格および軟組織の異常発生率は処置群と対照群の間に差が無かった。(Food and Drug Research Lb.,1974b)

ウサギ
11、13、12、11と12匹の妊娠したDutch-beltedウサギの群に、それぞれ、0、3.3、15.3、71.2と330mg/kgの重炭酸ナトリウムを胃管で毎日与えた。類似した研究は、11、12、13、14と12匹のウサギに、それぞれ毎日胃管で0、1.8、8.3、38.6と179mg/kgの炭酸ナトリウムを妊娠6〜18日の間与えた。投与に関連したアドバースな影響は、着床に、また母と胎児の生存になかった。骨格と軟組織の異常の発生率は投与した群と対照群で等しかった。((Food and Drug Research Lab.,1974b)


ヒトにおける知見:506-87-6  (link to HSDB)
これらの化合物(アンモニウムイオンと重炭酸イオン)はヒトでは通常の代謝物である。炭酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムの明確な毒性のデータは限られているけれども、アンモニウム化合物(主として塩化アンモニウム)と炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの研究の結果から推定は評価の根拠となる。ヒトにおける臨床研究は高用量の炭酸アンモニウム、または重炭酸アンモニウム投与の結果は酸の塩基バランスにおける変化を招来することを示している。これは通常の生理反応である。食品に添加されている食飼中の炭酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムのレベルは身体的変化の原因になるのに必要なレベルより極端に少ない。毒性学的障害の危険はない。

評価
ヒトでの一日摂取許容量の設定
特定しない

「ADI特定しない」の提示は、入手できるデータ(毒性学的、生理学的、その他)に基づき、その物質の毎日の摂取量の合計は(使用また要求される影響を成し遂げるのに必要なレベルで使うことから起こること、また許容される食品内容からの)、委員会の意見では、健康に対する危険を表さないという意味である。この理由のために、そして、個別の評価に述べた理由から、一日摂取許容量(ADI)を確定する必要がないと思われる。



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