日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 タウマチン
英文名 Thaumatin

CAS 53850-34-3 (link to ChemIDplus)
別名 ソーマチン
収載公定書  薬添規(JPE2018) 食添(JSFA-IX)
用途 


JECFAの評価(1985年,第29回) (link to JECFA)
ヒトのADI(1日摂取許容量)
"Not specified"(特定せず)1)


単回投与毒性
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
マウス 経口 >20,000 mg/kg bw Ben-Dyke, 1975
ラット 経口 >20,000 mg/kg bw Ben-Dyke & Joseph, 1976



反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
ラット 90日間反復投与毒性試験
雌雄各10匹のCDラットから成る各群に飼料中濃度1.0、4.0、8.0%(w/w)として本物質を混餌投与した。対照群には、蛋白摂取量を高くするためにカゼインを8.0%(w/w)添加した基礎飼料を与えた。
いずれの群においても死亡はみられなかった。雄の4.0または8.0%のソーマチン投与群の体重増加量は、カゼインを摂取した対照群と比較して低かった(添加量4.0%の場合で6%、添加量8.0%の場合で9%低い)。雌ラットの体重増加量は投与の影響を受けなかった。4.0または8.0%の雌雄ソーマチンを摂取した雌雄の摂餌量はカゼイン投与対照群と比較して5〜11%低かった。8.0%のソーマチンを与えた雌ラットのヘモグロビン量に統計学的に有意な低下が認められた(3.2%、p<0.05)。しかし、値は週齢および体重が同等の動物において通常認められる範囲内であった。その他、血液および尿の細胞や化学成分は投与によって影響を受けなかった。8.0%のソーマチンをラットに与え、第12週に肝機能(ブロモスルホンフタレイン試験)および腎機能(濃縮試験)では、カゼイン対照群で得られた結果と同様の反応が見られた。二重拡散法(Ouchterlony法)で調べたところ、13週間ソーマチンを投与した群の血清でソーマチンに対する抗体が検出されたという証拠は得られなかった。雌で8.0%ソーマチン投与群において肝の絶対重量(14%)と相対重量(17%)に統計学的に有意な増加(p<0.05)を認めたが、広範囲な組織に対して行った詳細な肉眼的および病理組織学的検査では、投与に関連した変化は認められなかった1) (Ben-Dyke et al., 1976)

ラット 90日間反復投与毒性試験
雌雄各20匹から成るCDラット各群に飼料中濃度0、0.3、1.0または3.0%w/wでソーマチンを90日間混餌投与した。投与期間中、体重および摂餌量を記録した。さらに、0.3または1.0%投与群から得られた肝臓、腎臓、心臓、肺、脾臓および脳を組織学的に検査した。
肉眼で確認できる投与の影響は認められなかった。ソーマチン投与の結果として死亡した動物はみられなかった。雄の3.0%投与群の体重は、試験期間中、対照群と比較して6%増加した。雌1.0%投与群は、6週間後以降に6%の体重減少を示した。雌の3.0%投与群群の摂餌量は、投与期間中、対照群よりも7%減少した。投与に関連した影響は摂水量または眼科学的検査では観察されなかった。血液および血清検査では、第12週にヘマトクリット値の有意な増加が、雄の1.0%投与群で8%、3.0%投与群で13%とみられたが、雌では有意な減少が0.3%投与群で10%、1.0%投与群で12%みられた。投与第4週および第12週に、投与量と相関した最高60%のトリグリセリド濃度の減少が雌で観察された。尿検査結果は投与による影響を受けなかった。
剖検時に全動物について実施した詳細な肉眼的検査で、投与に関連した変化は認められなかった。雌の投与群の腎重量は8%増加し、相対重量では、その増加量は13%となった。甲状腺重量は、対照群と比較して、絶対重量および相対重量のいずれにおいても、雄の全投与群で有意に高く、雌の全投与群で有意に低くなった。筆者は甲状腺重量の変化を毒性学的に意義のあるものとは結論しなかった。なぜならば、雄の対照群の甲状腺絶対重量は背景データと比較して異常に低く、雄の投与群の平均重量は、引用された背景データの範囲内であった。一方、雌の対照群の甲状腺絶対重量は、背景データの範囲内にあった。つまり、甲状腺の絶対重量および相対重量に投与と関連した見かけ上の減少が認められたわけである。病理組織学的検査を実施したところ、対照群および3.0%投与群の組織に、投与に関連した変化は見られなかった。さらに、全群の全動物から得られた甲状腺の組織学的検査において、投与に関連した変化は認められなかった1) (Hiscox et al., 1981; Wood, 1984)。

ラット 4週間反復投与毒性試験
CDラットを用いて追加試験を実施し、甲状腺機能低下または亢進作用がないことが確認した。雌雄各10匹から成る各群に、3%のソーマチンまたは3%の卵白アルブミンを含む飼料を4週間与えた。投与期間終了後、チロキシン(T4)およびトリヨードサイロニン(T3)について、採取した血液試料を検査した。ソーマチン投与群および卵白アルブミン投与群間で甲状腺ホルモン濃度に統計学的に有意な差は見られなかった。ソーマチンを飼料中濃度3%で与えたところ、ラットの甲状腺機能に影響はみられなかったと結論された(Danks et al., 1984)。

イヌ
イヌ 90日間反復投与毒性試験
雌雄各4頭のビーグル犬から成る群に0、0.3、1.0または3.0%(w/w)の濃度でソーマチンを90日間以上混餌投与した。投与期間中、毎週体重を記録し、摂餌量を毎日記録した。投与終了時、詳細な肉眼的検査を実施した。副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、卵巣、下垂体、前立腺、脾臓、精巣、甲状腺および子宮の重量を記録した。全動物から得られたこれらの臓器とその他の広範囲な組織に対して病理組織学的検査を実施した。
死亡はなく、投与による明らかな影響は認められなかった。雄のソーマチン投与群では、対照群と比較してわずかな体重増加が認められた。摂餌量および摂水量は投与の影響を受けなかった。眼科学的検査では、投与に関連した変化を認めなかった。投与第4週および12週に実施した血液学的検査では、雄の3.0%ソーマチン投与群にヘモグロビン濃度、赤血球数、およびヘマトクリットのわずかな減少が認められた。しかし、これらの値は過去に対照群が示した測定値の範囲内にあった。血液生化学的検査では、投与に関連した変化は認められなかった。尿検査は投与の影響を受けなかった。終了時に実施した肉眼的検査では、投与に関連した変化は認められなかった。絶対肝重量の増加(20%)が雄の3.0%ソーマチン投与群で認められた。相対重量とした場合、臓器重量には投与に関連した変動は認められなかった。病理組織学的検査からは、ソーマチン投与と関連した変化は認められなかった1) (Barker et al., 1981)。


遺伝毒性
復帰突然変異試験
Salmonella typhimurium菌株TA98、TA100、TA1535、TA1537、TA1538またはEscherichia coli菌株WP2を用いたAmes試験において、S-9ミックスの添加あるいは無添加いずれにおいても50 mg/プレートまでの用量で、ソーマチンに、変異原性は見られなかった1) (Higginbotham, 1980; Higginbotham et al., 1983)。

優性致死試験
優性致死試験では15匹の雄性CD1マウスから成る各群に200または2000 mg/kg/日のソーマチンを5日間強制経口投与した。100 mg/kg/日のトリメチルリン酸(陽性対照)または溶媒である精製水(陰性対照)についても同様に投与した。投与終了後、各雄を最高7日間/週まで3匹の無処置の雌と交配させ、これを連続7週間繰り返した。陽性対照群において、受精は影響を受けなかったが、投与後最初の2週間に胚と胎児の致死率は著しく、受精卵の状態発育割合において有害な影響が見られた。一方、ソーマチン投与群においては、交尾4、11または18日後に動物を屠殺して評価したところ、雄の交尾能および受精能、卵子の受精、受精卵の発育および生存、着床前・着床後胚損失率において、ソーマチン投与による影響は見られなかった。実施した試験条件下においてソーマチンは雄マウス配偶子に優性致死突然変異を誘発しなかったと結論された1) (Tesh et al., 1977a)。


がん原性
該当文献なし


生殖発生毒性  (link to DART)
ラット
ラット 催奇形性試験
妊娠CDラット20匹から成る各群に妊娠6〜15日目(15日目を含む)に0.2、0.6または2.0 g/kg/日のソーマチンを強制経口投与した。対照群には同期間中、ソーマチンの投与容量と同じ10 ml/kgの溶媒(精製水)を投与した。妊娠21日目に全ラットを屠殺し、各卵巣の黄体数、着床数、着床位置および着床状態を記録した。生存胎仔の体重測定、性別確認および外観検査を実施した。残りの胸腔および腹腔を解剖して調べ、続いて実施する骨格検査のために処理を施した。妊娠雌および同腹児の反応(同腹児数、胎児体重、着床前消失、着床後消失)に有害作用は認められなかった。胎児に、投与に起因する内臓異常あるいは骨格異常は認められなかった1) (Tesh et al., 1977b)。


局所刺激性
ラット
ラット 抗原性試験
ソーマチン10 μgまたは卵白アルブミン10 μgのいずれかをFreund’sアジュバントとともに皮下注射して感作させたラットの試験によると、受身皮内アナフィラキシー法(passive subcutaneous anaphylaxis dilution-titration)で測定したアナフィラキシー抗体の血清中濃度は、卵白アルブミンと比べてソーマチンの方が一様に低かった1) (Stanworth, 1977)。

ラット ヒスタミン放出誘導試験(in vitro)
ソーマチンの非免疫学的なヒスタミン放出誘導能を調べたin vitro試験によると、ラット培養マスト細胞標本から得られる最大ヒスタミン量の50%を放出させるには、およそ1 mMのソーマチンが必要であった。この試験で使用された標準ヒスタミン放出薬であるSynacthen(ACTH β1-24ポリペプチド)は、かなり低い濃度(2 μM)で最大ヒスタミン量の50%を放出した。この所見は正常なヒヒを用いてin vivoで確認された。エバンスブルーの静注直後、ソーマチン1 mMを皮内注射しても弱い青色を示すのみであったが、Synacthen 1 μMを注射した場合には評価可能な陽性反応を示した1) (Stanworth, 1977)。

モルモット
モルモット 抗原性試験
ソーマチン50 mgまたは卵白アルブミン50 mgのいずれかを(IgE抗体反応誘発によく用いられる不完全アジュバントとともに)、筋肉内注射して感作させたモルモット(5匹/群)から摘出した回腸標本で試験を実施したところ、反応を誘発するソーマチンの最小用量は250 ngであった。これは、卵白アルブミンに感作させた対照動物の腸管でアナフィラキシー反応を誘発するために必要な卵白アルブミンの最小用量と同程度であった。蛋白および完全Freund’sアジュバントで感作させたモルモットから摘出した回腸標本で試験したところ、本質的に同程度の結果が得られたが、ソーマチン50 ngは反応を誘発したのに対し、同用量の卵白アルブミンは反応を誘発しなかったため、ソーマチンの方がわずかに強い感1) (Stanworth, 1977)。


その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
誤用
その他
ヒト
英国人外科医がThaumatococcus danielliiの果実の強い甘味についてPharmaceutical Journalに最初に発表した(Daniell, 1855)。

現在、都市部では甘味料は広く砂糖に置き換わっているが、ガーナおよび象牙海岸において、甘味料としてヒトがその果実を利用してきた歴史は長く、摂取後に異常または毒性作用がみられないことは、村落に住む高齢者から得た多数の供述書(affidavit)で証明される1) (Higginbotham & Stephens, 1984)。

ヒト
二重盲検クロスオーバー試験で、ゼラチンカプセルに充項した100 mg/日のソーマチンまたはラクトースを4名の女性および6名の男性に14日間与え、ヒトの口腔内アレルゲン性についてソーマチンを評価した。被験者を無作為に各群5名から成る2群に割り付け、被験物質またはラクトースのいずれかを与えた。試験前に全被験者に対して、既知アレルゲンおよびソーマチン溶液についてプリック試験を実施した。ソーマチンに対してプリック試験そのものによって感作されるか明らかにするため、試験前に7名の被験者にはソーマチンで2回目の検査を行ったが、感作は認められなかった。試験終了時に、ソーマチン摂取後に感作が発生するか明らかにするため、追加のプリック試験を実施したが、感作は認められなかった。開始時および28日間の試験終了後に被験者から血液を採取した。ヒヒおよびアカゲザルを用いて受身皮下アナフィラキシー法で行った。ソーマチンに対する抗体を調べる血清検査では皮下または経口投与によりでソーマチンを感作させたが、反応は認められなかった。臨床評価では、投与と関連したアレルギー作用はみられなかった1) (Eaton et al., 1981)。

ヒト
ソーマチンのヒト口腔内での感受性と刺激性について評価した。150 ppmのソーマチンを含むチューイングガムを25名の被験者に与えた。各被験者は、1枚につき15分間、1日5枚、5.3 gのガムを噛み、これを28日間続けた。25名の被験者から成る同様な設定をした群にはソーマチン無添加のガムを与えた。試験群および対照群への被験者の割り付けは無作為化し、二重盲検法で実施した。試験実施期間前後において、被験者にみみず腫れまたはフレア反応は認められなかった。また、添加または無添加のガムを噛んだ後に、口腔粘膜上に肉眼で確認できる刺激反応またはアレルギー反応の徴候は認められなかった。ソーマチンは本試験条件下で口腔粘膜の刺激またはアレルギー反応の原因ではないと結論された1) (McLeod et al., 1981)。

ヒト
血液学的パラメータおよび血液生化学的パラメータに対するソーマチンの作用を明らかにするため、臨床試験が実施された。18名の男性被験者および12名の女性被験者を無作為に2群に割り付けた。各被験者には1週間分のカプセルが与えられた。各カプセルには280 mgのソーマチンまたは210 mgの卵白アルブミンが含まれており、毎朝午前9時に1カプセルを摂取するように依頼した。この方法を連続13週間実施した。カプセルにはコードが付けられ、成分は医師および担当病理学者にしか分からないようにし、試験開始前および4、8、12週間後に血液を採取して、検査を実施した。血液の化学成分または細胞成分に関して、対照群と比較して、ソーマチンを摂取した被験者には、投与に関連した変化を認めなかった。これら被験者によるソーマチンの累積摂取量は25gで、これは、消費者の最大推定摂取量の約140倍となる1) (Tompkins & Enticknap, 1984)。

ヒト
ソーマチンを間欠的に最長7年間吸入していた実験担当者を対象としたプリック試験によると、およそ2分の1(67/140)の被験者は一般的な吸入アレルゲンに反応を示した。13例の被験者にソーマチンに対する陽性反応が認められたが、1例を除いて全例がアトピーまたはアレルギーを有する者であった 1) (Higginbotham et al., 1983)。


引用文献
1) WHO Food Additive Series No.20 Taumatin, 1985 (accessed ; Dec. 2004, (link to WHO DB)


   

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