日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 エステルガム
英文名 Ester Gum

CAS 68475-37-6 (link to ChemIDplus)
別名 Glycerol ester of wood rosinJECFA】、ロジンエステル、エステルガム
収載公定書  薬添規(JPE2018) 食添(7) 外原規(2006)
用途 粘着剤、粘着増強剤、基剤

JECFAの評価 (link to JECFA)
1996年,第46)
NOAEL
(無毒性量)又はNOEL(無影響量);ラットの13週間毒性試験、2500 mg/kg体重/1
ヒトのADI1日摂取許容量);025 mg/kg 1


単回投与毒性

動物種

投与経路

LD50orLC50

文献

マウス

経口

4100 mg/kg

Hercules, 19742)

ラット

経口

8400 mg/kg

Hercules, 19742)

モルモット

経口

4100 mg/kg

Hercules, 19742)




反復投与毒性
ラット
ラット 90日間反復投与毒性試験
Sprague-Dawley
ラット(雌雄各10匹)の群にエステルガム8D 0.010.050.21.0または5.0%(6311206302660 mg/kg体重/日に相当)(本物質の30%コーン油懸濁液を調製し基礎飼料に混合)で90日間混餌投与した。対照群およびすべてのエステルガム8D投与群の食餌にコーン油が2.3%含まれていたが、5%投与群の食餌のみ、コーン油を11.7%含有していた。本試験では、一般状態、死亡、体重および体重増加、摂餌量、食餌効率、血液検査、尿検査、臓器重量、肉眼的および病理組織学的検査のパラメータについて検討した。この試験期間中に、投与群あるいは対照群に死亡は認められなかった。1.0%以下の投与群において、体重、摂餌量、血液検査、尿検査、肉眼的および病理組織学的検査所見に有意な影響は認められなかった。5.0%投与群の摂餌量は投与群に比してわずかに少なかった。この差はおそらく、5.0%群のコーン油の混餌含量が高かったことが原因とされた。いずれの臓器にも投与と関連する病理組織学的変化は認められなかった。本試験において、630 mg/kg体重/日に相当する1.0%投与が、無影響量(NOEL)と判断された2) (Kay, 1960a)。

ラット 90日間反復投与毒性試験
Sprague-Dawley
ラットの群(雌雄各10匹)に対して、00.010.050.2、あるいは1.0%(06.436119674 mg/kg体重/日に相当)のN-ウッドロジン(40%コーン油懸濁液として基礎飼料に添加)を90日間混餌投与した。対照群として、まったく同一の2群を設けた。5.0%の混餌投与を試したが、全動物が投与8日目までに死亡したため、試験早期に中止した。最終的なコーン油含量は全投与群および対照群の食餌で2.3%となった(ただし、5.0%投与群では11.7%)。試験パラメータは、一般状態、摂餌量、体重、血液検査、尿検査、臓器重量、肉眼的および病理組織学的検査などであった。対照群あるいは低用量のウッドロジン投与群に死亡は認められず、ヘモグロビン、ヘマトクリット、総白血球数、白血球分画、尿検査パラメータについて、投与群と対照群に有意差は認められなかった。
1.0
%投与群の雌雄ラットの体重は、試験全体において有意に抑制された。試験最初の2週間において、この投与群の体重増加は抑制され、その後の体重増加は、対照群と同じであった。しかし、1.0%投与群の雄の体重は、第1対照群と比較した場合のみ有意に低かったが、第2対照群と比較した場合はそうではなかった。臓器重量については、1.0%投与群の雌雄を対照群と比較したとき、肝臓の相対重量および脳の相対重量に統計学的に有意な増加が認められた。ただし、1%投与群雌の脳の相対重量のみ、第2対照群と比較した場合、統計学的に有意な増加が認められたが、第1対照群と比較した場合には認められなかった。ウッドロジン投与と関連する、肉眼的および病理組織学的異常は、投与群のいずれの臓器にも認められなかった2) (Kay, 1960b)。

ラット 13週間反復投与毒性試験
6週齢のCharles River Fischer 344ラット(雌雄各20匹)からなる群に、エステルガム8BG06251250または2500 mg/kg体重/日で13週間混餌投与した(NIH Open Formula Diet)。一般状態、眼科的検査、体重、摂餌量、血液学的検査、血液生化学的検査(試験の中間、および終了時に実施)、臓器重量、肉眼的および病理組織学的検査を測定パラメータとした。
試験期間中、投与群あるいは対照群のラットに死亡例はなく、外観、行動、眼科的検査結果において投与に起因する変化は認められなかった。試験最終の数週間に1250および2500 mg/kg体重/日群で雌の体重増加がわずかだが有意に抑制された。しかし、これらの体重増加へのわずかな影響は無視できるもので、おそらく食餌の希釈に起因すると考えられる。用量と相関する摂餌量のわずかな増加が雌雄両群の全投与量で認められ、一部では統計学的有意差が認められたが、食餌の希釈はこのような変化にも関与している可能性がある。血液学的検査値および血液生化学的検査値の平均値には、投与群と対照群との間で用量に関連した統計学的有意差は認められなかった。
剖検時に著者は、対照群および高用量群間のわずかな差を、雄の盲腸(内容物含む)の相対重量、雌の肝重量、胸腺重量、胸腺/脳重量比について認めた。しかし、このような差は小さく、投与による重大な影響であるとは考えられなかった。投与に関連した肉眼的あるいは病理組織学的変化は、いずれの臓器にも認められなかった。重量変化が認められたいずれの臓器にも組織学的異常は認められなかった。この試験における無影響量(NOEL)は2500 mg/kg体重/日であった2) (Blair, 1991, 1992)。

ラット 24ヶ月間反復投与毒性/癌原性試験
離乳Sprague-Dawleyラット(雌雄各30匹、個体別に飼育)に対して、ロジン含有コーン油をロジン濃度00.050.21%(02488434 mg/kg体重/日に相当)となるように24ヶ月混餌投与した。最終的なコーン油含量は全試験群および対照群の食餌で2.3%となった。12ヶ月の時点で、雌雄各5匹のラットを肉眼的および病理組織学的検査のために屠殺した。全生存動物は、24ヶ月後に屠殺し、臓器重量を測定し、病理学的検査を実施した。
12
ヶ月後および24ヶ月後、雌雄の1%投与群において体重が対照群に比して有意に低値となった。嗜好性の低下に起因する摂餌量低下が認められる場合があり、1%投与群の体重低下も、これが原因であった可能性がある。生存率、腫瘍発生率、血液検査、尿検査、肉眼的および病理組織学的検査所見について、ウッドロジン投与群および対照群間に有意差は認められなかった。高用量群の雌で肝臓の相対重量の上昇が認められ、腎臓、膵臓および生殖腺の相対重量において、投与群といずれか片方の対照群間で散発的な有意差が認められた2) (Kohn, 1962a)。

イヌ
イヌ 24ヶ月間反復投与毒性/癌原性試験
ビーグル犬の群(雌雄各3匹)に対して、N-ウッドロジン濃度が0.05%または1.0%(14または260 mg/kg体重/日に相当)となるようにN-ウッドロジン含有コーン油を24ヶ月間混餌投与した。雌雄各6匹から成る対照群には基礎飼料を与えた。体重、摂餌量、生存率および行動の変化、血液検査および尿検査、肝および腎機能検査、肉眼的および病理組織学的検査の各パラメータについて検討した。1.0%投与群以外では、体重を除きいずれのパラメータにも有意差は認められなかった。1.0%投与群では、肝および腎臓のサイズがいくらか大きかった(ただし、病変は認められなかった)。雄の高用量群の平均体重および平均摂餌量は、低用量群の雄に比しておよそ30%の低値であった。このような変化は、食餌の嗜好性低下に伴うものと考えられる。著者は、本試験の無影響量(NOEL)は1.0%と結論した2) (Kohn, 1962a)。


遺伝毒性
ウッドロジングリセリンエステルに対する遺伝毒性試験結果 2)

試験

試験系

濃度

結果

文献

Ames試験※

S. typhimurium TA92TA94TA98TA100TA1535TA1537

10000 μg/plate

陰性

Ishidate et al. 1984

Ames試験※

S. typhimurium TA98TA100TA1535TA1537TA1538

2.5500 μg/plate

陰性

Jagannath, et al. 1988

染色体異常試験

チャイニーズハムスター繊維芽細胞

8000 μg/ml

陰性

Ishidate et al. 1984

CHO/細胞遺伝学的試験※

CHO/細胞遺伝学的試験※

CHO/細胞遺伝学的試験※

陰性

Murli, 1988

不定期DNA合成試験

ラット初代肝細胞

5.1102 μg/ml

陰性

Cifone, 1988

上述試験における曝露処理は1回であることに留意すること。
※ ラット肝S-9分画添加および無添加のいずれも実施。

マウス 姉妹染色分体交換、染色体異常試験 マウスに50100150 mg/kgを経口投与し、姉妹染色体分体交換、染色体異常試験を行なった。構造型染色体異常の軽度の誘導、交換頻度の増加が認められた3Mukherjee et al., 1992

ウッドロジン中の樹脂酸に対する遺伝毒性試験結果 2)

試験

試験系

濃度

結果

文献

Ames試験※

S. typhimurium
TA92
TA94TA98TA100
TA1535
TA1537

10000 μg/plate

S-9活性化なしの状態で
ネオアビエチン酸について陽性

Nestmann et al. 1979

変異原性試験

酵母D7XV185-14C

502000 μg/ml

XV185-14C細胞の試験において
ネオアビエチン酸について陽性

Nestmann & Lee, 1983

※ラット肝S-9分画添加および無添加のいずれも実施


がん原性
ラット
ラット 24ヶ月間反復投与毒性/がん原性試験
離乳Sprague-Dawleyラット(雌雄各30匹、個体別に飼育)に対して、ロジン含有コーン油をロジン濃度00.050.21%(02488434 mg/kg体重/日に相当)となるように24ヶ月混餌投与した。最終的なコーン油含量は全試験群および対照群の食餌で2.3%となった。12ヶ月の時点で、雌雄各5匹のラットを肉眼的および病理組織学的検査のために屠殺した。全生存動物は、24ヶ月後に屠殺し、臓器重量を測定し、病理学的検査を実施した。
12
ヶ月後および24ヶ月後、雌雄の1%投与群において体重が対照群に比して有意に低値となった。嗜好性の低下に起因する摂餌量低下が認められる場合があり、1%投与群の体重低下も、これが原因であった可能性がある。生存率、腫瘍発生率、血液検査、尿検査、肉眼的および病理組織学的検査所見について、ウッドロジン投与群および対照群間に有意差は認められなかった。高用量群の雌で肝臓の相対重量の上昇が認められ、腎臓、膵臓および生殖腺の相対重量において、投与群といずれか片方の対照群間で散発的な有意差が認められた2) (Kohn, 1962a)。

イヌ
イヌ 24ヶ月間反復投与毒性/がん原性試験

ビーグル犬の群(雌雄各3匹)に対して、N-ウッドロジン濃度が0.05%または1.0%(14または260 mg/kg体重/日に相当)となるようにN-ウッドロジン含有コーン油を24ヶ月間混餌投与した。雌雄各6匹から成る対照群には基礎飼料を与えた。体重、摂餌量、生存率および行動の変化、血液検査および尿検査、肝および腎機能検査、肉眼的および病理組織学的検査の各パラメータについて検討した。1.0%投与群以外では、体重を除きいずれのパラメータにも有意差は認められなかった。1.0%投与群では、肝および腎臓のサイズがいくらか大きかった(ただし、病変は認められなかった)。雄の高用量群の平均体重および平均摂餌量は、低用量群の雄に比しておよそ30%の低値であった。このような変化は、食餌の嗜好性低下に伴うものと考えられる。本試験の無影響量(NOEL)は1.0%と結論された2) (Kohn,1962a)。


生殖発生毒性
該当文献なし


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見
ヒト 抗原性試験
根管充填剤を繰り返し適用した後に口内炎を発現した歯科患者に対して、パッチテストを行ったところ、松やに(ロシン)に対して多少感作が認められた。患者18例中(男性6例および女性12例、3371歳)、3例(17%)は松やにに対して陽性反応を示した2)Koch et al., 1971)。

歯科治療で使用する薬剤および材料に対して、術前に反応を認めなかった合計133例の歯科患者が松やにに示す感作性は無視できる程度であり、1例(0.8%)のみパッチテスト結果が陽性になった2) (Kochet al., 1973)。

歯科医が、根管充填剤(periodontal dressing)由来のロシンに対して接触アレルギーを示す33歳男性の症例を報告した。歯根膜手術が実施され、術後合併症は認められなかった。初回手術1週間後、新たな外科的充填が行われた。4日後、患者は口腔内症状および皮膚症状を発現したが、根管充填剤をワックス充填剤と交換した24時間後に、症状は消退した。パッチテストによると、患者はロジンに対して接触アレルギーを示した。しかし、最初の根管充填剤の組成に含まれるオイゲノールあるいは酸化亜鉛に対してはアレルギー反応を示さなかった2) (Lysell, 1976)。

女性150例を対象としたパッチテストで、化粧品およびトイレタリー用品(ロシン含有製品を含む)による接触アレルギーを調べた。ロシンの種類についての報告はなかった。試験した女性150例のうち、1例(0.7%)のみがロシンに対して陽性反応を認めた2) (De Groot et al., 1988)。

患者1785例について行ったパッチテスト試験では、松やに(ロシン)を含め、疑いのある数種類のアレルゲンに対する接触過敏症が調査された。試験したロシンの種類は報告されなかった。合計50例の患者(2.8%)が適用48時間または72時間後に松やにについて陽性を示した。性別については、男性の発生率は1.8%(11/613)、女性の発生率は3.3%(39/1172)であった。性別分布にみられるこのような差は有意であるとは判定されなかった。松やにに対する過敏症は50歳以上の患者で高頻度(4.4%)で発生した2)Young et al., 1988)。

医師の報告によると、22歳女性が1日に数回リップスティックを使用したところ、唇に丘疹、乾燥、色素沈着を認めた。パッチテストによると、女性はリップスティックの1成分であるエステルガム(0.1%含有)のみに反応を示した。さらなるパッチテストでは、女性はロシン、ペルーバルサム、テレペンチン油に対しては反応を示さなかった。女性は、リップスティックに含まれるエステルガムに対して感作していると診断された2) (Ogino et al., 1989)。

医師の報告によると、8歳男児が18ヶ月間にわたって口囲皮膚炎を繰り返し再発していた。患者は皮膚炎症状の各発現前に頻繁にガムをかんでいた。パッチテストでは、チューインガムおよび風船ガムのほか、コバルト、ロシン、香料ミックス、オークモス、およびイソオイゲノールに反応がみられた。口囲皮膚炎は改善したが、その小児がガムを噛むのをやめるまで、症状は消えなかった。ロジン以外のアレルゲンに対する過敏症の可能性は除外できなかった2) (Satyawan et al., 1990)。


引用文献
1
WHO Food Additive Series No.37 GLYCEROL ESTER OF WOOD ROSIN 1996 (accessed ; Dec. 2004) (link to WHO DB)

2
WHO Food Additive Series No.35 GLYCEROL ESTER OF WOOD ROSIN 1996 (accessed ; Dec. 2004) (link to WHO DB)
3) 第7版食品添加物公定書解説書

Abbreviation

TOXNET DB; ChemIDplus DB in TOXNET, CCRIS;Chemical Carcinogenesis Research Information System , DART; Developmental Toxicology Literature
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