日本医薬品添加剤協会
Safety Data
|  Home | menu |

和名 ベンザルコニウム塩化物
英文名 Benzalkonium Chloride

CAS 8001-54-5
別名 
塩化ベンザルコニウム
収載公定書  JP(15)  外原基(2006) USP/NF(28/23)  EP(4)
用途 安定(化)剤、緩衝剤、懸濁(化)剤、等張化剤、乳化剤、防腐剤、保存剤

最大使用量
筋肉内注射 1.8mg、皮下注射 1mg、その他の注射 0.4mg、一般外用剤 1mg/g、経皮 0.1mg/g、直腸膣尿道適用 0.3mg/g、眼科用剤 0.1mg/mL、耳鼻科用剤 0.8mg/g、吸入剤 0.1mg/g


単回投与毒性

動物種

投与経路

LD50

文献

モルモット

経口

200 mg/kg

Wada & Weller, 19941)

マウス

腹腔内

10 mg/kg

Wada & Weller, 19941)

マウス

静脈内

10 mg/kg

Wada & Weller, 19941)

マウス

経口

175 mg/kg

Wada & Weller, 19941)

マウス

皮下

62 mg/kg

Wada & Weller, 19941)

ラット

腹腔内

14.5 mg/kg

Wada & Weller, 19941)

ラット

静脈内

13.9 mg/kg

Wada & Weller, 19941)

ラット

経口

240 mg/kg

Wada & Weller, 19941)

ラット

皮下

400 mg/kg

Wada & Weller, 19941)

ラット

皮膚

1.56 mg/kg

Wada & Weller, 19941)




反復投与毒性
該当文献なし


遺伝毒性
該当文献なし


癌原性
培養シリアン・ハムスター胎児(SHE)細胞を使って、6種類の歯科臨床で使用されている薬物の発癌性と遺伝毒性を検討した。これらの薬物処理でSHE細胞に誘導される形態形質転換を発癌性のマーカーに、不定期DNA合成(DNA障害を修復するためのDNA合成)と姉妹染色分体交換(SCEs)を遺伝毒性のマーカーにした。塩化ベンザルコニウムの48時間処理によりSHE細胞には形質転換が誘導されなかった。また、これらの薬物処理による細胞生存率はいずれも対照群の64%以上であった。不定期DNA合成は塩化ベンザルコニウムでは有意な誘導がみられなかった。これらの薬物の18〜20時間処理によって、いずれもSCEsが有意に誘導されたが、その誘導頻度は無処理群の2倍未満であった。2) (福田真也, 1987)


生殖発生毒性
ラット
殺精子剤である塩化ベンザルコニウムの影響をラットで試験した。塩化ベンザルコニウム水溶液(0, 25, 50, 100, 200 mg/kg)を妊娠1日目に膣内に単回投与(1mL/kg)した。溶液が漏れるのを防ぐためにつけた外陰部の金属製のクリップを24時間後にはずした。妊娠21日目に仔を取り出し検査した。塩化ベンザルコニウムの最高濃度と2番目の高濃度ラットにおいて多量の膣分泌物と膣炎がみられた。塩化ベンザルコニウム投与ラットにおいて、用量依存的に胚の再吸収と胎児死亡がみられ、仔のサイズと体重が減少した。胚の減少は、着床の前後でみられていたと思われる。塩化ベンザルコニウムは、認識可能な催奇形性はみとめられなかった。しかしながら、殺精子剤100または200 mg/kgの暴露を受けた胎児において、胸骨の欠損がみられた。これらの結果から、ラットへの塩化ベンザルコニウム単回膣内投与は、女性における受精コントロールへの推奨用量よりも143倍高濃度の投与で、胚芽とfetocidalな影響がみられた。3)Buttar HS, 1985)

マウス
塩化ベンザルコニウムの妊娠マウスの母体および胎仔に及ぼす影響について検索した。実験Tでは、高濃度の塩化ベンザルコニウムの、3, 10および30mg/kgを妊娠初期0日目から6日目まで毎日1回強制経口投与し、妊娠13日目に屠殺した。その結果、母体の体重、摂餌量および一般状態に影響は認められなかった。また、着床数、生存胎仔数、性比および生存胎仔体重にも変化は認められなかった。しかしながら、10および30mg/kg処置群では妊娠率の低下傾向がみられた。実験Uは、2つの実験群よりなり、1つの群には低濃度の塩化ベンザルコニウムの1、50および100μg/kgを妊娠0日目から6日目までの妊娠初期に投与した。また、もう1つの群には1および50μg/kgを妊娠0日目から18日目までの妊娠全期間にわたり投与した。いずれもの実験群でも対照群と各処置群との間に有意な変化は認められなかった。以上の結果から、塩化ベンザルコニウムは高濃度の30mg/kg群において着床阻害あるいは流産を引き起こす可能性が示唆されたものの、100μg/kg以下の低濃度においては、生殖機能に対して何ら影響を及ぼさないものと考えられた。4) (門馬純子ほか、1987)


局所刺激性
ウサギ
ウサギ角膜を用い、塩化ベンザルコニウムによる角膜上皮細胞障害をin vitroで検討した。最初にウサギ角膜の角膜上皮細胞を培養した。放射活性物質51Crを含む角膜上皮細胞に、塩化ベンザルコニウムを0.001%、0.005%、0.001%、0.05%、0.1%の濃度でそれぞれ5、10、30、60分間暴露させた。対照群細胞には、リン酸緩衝溶液のみを用いた。51Cr角膜上皮細胞から表面に放出された51Crは、上皮細胞破壊指数として用いられた。細胞分離(細胞機能障害の指数)は、表面と洗液の51Cr活性を測定することで分析した。形態学的細胞障害は、電子顕微鏡を用いて検査した。塩化ベンザルコニウムの高用量及び長時間の暴露は、角膜上皮細胞破壊が有意に(P<0.05)上昇していた。塩化ベンザルコニウムの0.005%、5分間の暴露で細胞に重篤な障害が認められた。細胞機能は、塩化ベンザルコニウム0.005%、30分間の暴露で最も顕著にあらわれたが、長時間暴露で減少していた。低濃度のであったが、塩化ベンザルコニウムの長時間暴露で有意な細胞質障害が認められた。角膜上皮細胞の細胞質膜の破壊は、塩化ベンザルコニウム高濃度の0.1%であらわれ、0.001%の濃度でも30分間の長時間暴露でみとめられた。塩化ベンザルコニウムは角膜上皮細胞機能障害を引き起こし、また角膜上皮細胞バリアに障害を引き起こす。この影響は、塩化ベンザルコニウムが低濃度(0.001%)であっても頻回または30分以上の時間で用いられた時に認められた。5) (Cha SH et al., 2004)

ウサギの皮膚及び眼への塩化ベンザルコニウムの刺激の閾値およびモルモットに対する感受性を検討した。本試験はOECDガイドラインに基づいて行われた。一箇所の閉鎖暴露又は数箇所の開放暴露における皮膚へのわずかな炎症反応を引き起こすベンザルコニウムの閾値濃度として以下の水溶液が採用された:それぞれ、>0.5-1%、5%。0.5%、0.1%のベンザルコニウム水溶液の眼への投与後の弱い刺激がみられ、すぐに回復した。モルモットで行った試験では、0.5%、0.1%、0.05%のベンザルコニウム水溶液で過敏性がみとめられた。この影響は、濃度依存的でなかった。0.1%ベンザルコニウム水溶液が、ヒトにおける過敏性をモニターするための眼内濃度であることがわかった。6)Krysiak B at al., 1998)

塩化ベンザルコニウムのウサギ角膜への影響をin vivoでTandem scanning confocal 顕微鏡(TSCM)で試験を行い、通常の電子顕微鏡(SEM)で確認した。生理食塩水、または0.02、0.01、0.005%の濃度の塩化ベンザルコニウムリン酸塩緩衝液2滴をウサギの眼に5分間隔で15回投与した。生理食塩水はpH 5.5-5.9、塩化ベンザルコニウムはpH 7.5で、オスモル濃度(浸透圧モル濃度)は、それぞれ275-280、300-307であった。0.02と0.01%の塩化ベンザルコニウム投与直後に、in vivo TSMCで正常な角膜上皮細胞が映し出されなかった。艶なKベンザルコニウム非含有の対照溶液では、上皮細胞の腫大はみられなかったが、落屑が少しみられた。0.005%の塩化ベンザルコニウの滴下では、上皮細胞に腫大と落屑がみられた。角膜上皮細胞の落屑は、塩化ベンザルコニム高濃度で多くなった。最後の滴下1時間後、0.02%塩化ベンザルコニウムで角膜表面の炎症細胞がみとめられた。本試験の結果より、塩化ベンザルコニウムの頻回の使用は、臨床的な角膜毒性を引き起こし、局所点眼液の細胞毒性は、in vivo TSCMによって評価することができることがわかった。7)Ichijima H et al., 1992)

ラット
15匹のラットに、防腐剤として塩化ベンザルコニウムが含有しているステロイドと含有していないステロイドを、21日間1日2回、右鼻孔内投与した。一方、左鼻孔には、0.9%NaClを投与した。鼻の中心部を切断し、鼻のすべての部分の粘膜構造調査した。ベンザルコニウム含有ステロイドに暴露された鼻孔の扁平上皮細胞部分には、組織変質がみられた。このような変化は、塩化ベンザルコニウム非含有ステロイドや0.9%NaClではみとめられなかった。塩化ベンザルコニウムは、in vivoにおいて粘膜に対する毒性もつことが明らかとなった。8) (Berg OH et al., 1997)


その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見
誤用
老年性痴ほう症の高齢者5例が10%塩化ベンザルコニウム水溶液であるHoesminを誤って摂取した。1例は、84歳女性で、唇と口腔に赤斑が発現し、明らかに悪化した。胃洗浄を施行したが、患者はHoesmin摂取3時間後に死亡した。剖検では、塩化ベンザルコニウムが摂食した舌、咽頭、喉頭、食道および胃の粘膜表面に腐食性の変化がみとめられた。さらに、塩化ベンザルコニウムが血清から検出された。患者は塩化ベンザルコニウム中毒により死亡したと考えられる。塩化ベンザルコニウムの致死中毒はまれであり、塩化ベンザルコニウム中毒の数例における剖検所見が報告されている。我々の所見は、塩化ベンザルコニウムの経口摂取の危険性について示している。9)Hitosugi M et al., 1998)

幼児で口腔内に11%液を誤って塗布し、口周辺と咽頭部に重篤な熱傷が生じた。直後より食欲不振、興奮、発熱、脱水症状、口腔内および咽頭部に多数の出血性病変を伴う灰白色の変化を認めた。10)(Wilson JT, Burr IM, 1975)

10%液150mLを誤飲し、50時間後に死亡。食道は粘膜の壊死、剥離、胃も広範囲のびらん、肝も萎縮がみられた。11) (藤原 勝他, 1967)

10%液約20mLを口に含み、繰り返し含嗽したところ、口腔粘膜の軽度の発赤、咽頭後壁のびらんが認められた。喉頭蓋内側、披裂部、仮声帯が発赤、腫脹、一部びらんを示し、両側の梨状陥凹、披裂、喉頭蓋ひだ、食道入口部の粘膜はびらんと白色状の変化を認めた。12) (太田和博他, 1984)

その他
防腐剤としてステロイド処方薬に入っていた噴霧塩化ベンザルコニウムで気管支狭窄となった症例が数例ある。13) (Beasley et al., 1986)

塩化ベンザルコニウム含有眼科用液により重篤なアレルギー性結膜炎を発現した医師の報告がある。結膜炎は、この防腐剤が入っている他の薬剤の使用により悪化した。14) (Fisher & Stillman, 1972)

23歳の女性喘息患者が、塩化ベンザルコニウム含有サルブタモール液の皮内テスト後にアナフラキシーショックを発現した例がある。患者は、ネブライザー液による吸入剤治療後に咳と呼吸困難を訴えたので、塩化ベンザルコニウムを含有する同液を用いて皮内テストを行った。約10分後に患者は、めまい、動悸、呼吸困難が発現した。検査では、頻脈、頻呼吸、低血圧が認められた。エピネフリン皮下注射と生理食塩水点滴で回復した。1ヵ月後、塩化ベンザルコニウムの気管支誘発試験を行ったところ、陽性であった。15) (Kim SH et al., 2004)

塩化ベンザルコニウム含有鼻腔内投与薬剤がヒトの鼻腔上皮細胞に障害を与えているか、薬物性鼻炎を悪化させていると思われる臨床的データがあるかどうかを確かめるために公表文献を探した。塩化ベンザルコニウム濃度が0.00045%から0.1%の幅で短期間または長期間暴露による評価が行われている試験が計18試験(in vivo 14、in vitro 4)あった。6ヶ月及び1年の長期間の試験を含む8試験は、塩化ベンザルコニウムに関連した有害な影響は認められなかった。これは、塩化ベンザルコニウムが、鼻腔組織に有害な影響を与えず、薬物性鼻炎を悪化させる傾向がみられなかったことを示している。また、10試験では、塩化ベンザルコニウムは鼻腔上皮に変性をもたらし、薬剤性鼻炎を悪化させたと結論づけている。そのうち2試験は、塩化ベンザルコニウムとプラセボまたはアクティブコントロール群と比較した時、統計学的に有意な差がみられている。これらの試験の結果において、試験のプロトコールに、薬剤性鼻炎と関連があるオキシメタゾリンが含まれていることに注目することが重要である。塩化ベンザルコニウム含有鼻腔内投与薬剤は、安全であり、長期投与、短期投与のどちらにおいても認容性があると思われる。16) (Marple B et al., 2004)

ショッピングセンターの掃除係の46歳女性が、ベンザルコニウムを含んだポリッシャー液を大量に吸入した2週間後に重篤な呼吸困難、咳、発熱で入院し、ミエロペルオキシダーゼ欠乏を伴うBOOP(器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎)がみられた。17) (Di Stefano F, 2003)

塩化ベンザルコニウムの眼内における長期間の影響について試験を行った。1999年2月に白内障手術中に使用される粘弾性物質の保存剤として含有されている塩化ベンザルコニウムの暴露をうけた19例に術直後、重篤な綿状角膜症が発現した。角膜移植を施行した2例を含む16例2000年4月から6月の間に試験を行った。眼症状、視力、バイオマイクロスコープ、眼内圧、眼底検査等を行った。64歳から98歳の男性6例と女性10例を術後14から16ヶ月間試験を行った。全ての患者に症状があり、12例の最高矯正視力は6/12またはそれより良く、4例は、6/18から6/60の間であった。5例に、角膜上皮浮腫がみられ、11例にDescemet膜のひだがみられた。影響を受けた眼の中心角膜の厚みは、620(SD 71)μmで、、反対側の眼562(SD 48) μmと比較し有意に厚かった。内皮細胞密度は、影響を受けた眼で830(SD 280)cells/mm2対2017(SD 446) cells/mm2と有意に低かった。平均細胞面積は、塩化ベンザルコニウム投与した眼で有意に高かった。塩化ベンザルコニウムは、眼内に用いたとき、角膜上皮に有害な作用をもち、重篤な綿状角膜症をひきおこす。18) (Eleftheriadis H et al., 2002)

8名の皮膚科医が、1990年5月から1991年12月の間に2146名の患者に塩化ベンザルコニウムがアレルギー性接触性皮膚炎を引き起こすかを調査し、パッチテストの必要性について評価した。225例にアレルギー反応がみられ、更に258例に過敏反応がみられた。12例のみが臨床的関連性がみられた。塩化ベンザルコニウムは、抗原性は弱いと考えられる。疑わしい症例(紅斑)と陽性初期症状(紫斑)はおそらく、過敏反応と考えられる。特別な例に対しては、0.1%塩化ベンザルコニウムワセリン又は水溶液によるパッチテストを推奨する。19) (Fuchs t et al., 1993)


引用文献
1) Wade A & Weller PJ ed; A handbook of pharmaceutical excipients, 2nd ed. The pharmaceutical press, London(1994): 27-31
2) 門馬純子; 衛生試験所報告 1987; 105: 20-25
3) Buttar HS ; J Appl Toxicol. 1985;5(6); 398-401
4) 福田真也; 歯学 1987; 74(6): 1365-1384
5) Cha SH et al., ; Clin Experiment Ophthalmol. 2004 Apr;32(2):180-4.
6) Krysiak B et al., Med Pr. 1998; 49(4): 371-9 
7) Ichijima H et al., Cornea 1992 May; 11(3): 368
8) Berg OH et al., Allergy 1997 Jun; 52(6): 627-32
9) Hitosugi M et al., Int J Legal Med. 1998; 111(5): 265-6
10) Wilson JT, Burr IM, Am J Dis Child. 1975; 129(10): 1208-9
11) 藤原 勝他:日内会誌,56:99,1967.
12) 太田和博他:日生医誌,12:93,1984.
13 Beasley R et al., Lancet 1986 22; 2(8517): 1227
14) Fisher AA & Stillman MA, Arch Dermatol, 1972; 106: 169-71
15) Kim SH et al., J Korean Med Sci. 2004; 19(2): 289-90
16) Marple B et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 2004; 130(1): 131-41
17) Di Stefano F et al., J Occup Health. 2003; 45(3): 182-4
18) Eleftheriadis H et al., Br J Ophthalmol. 2002; 86(3): 299-305
19) Fuchs t et al., Hautarzt 1993; 44(11): 699-702


   

メニューへ




 

copyright(C) 2005 日本医薬品添加剤協会 all rights reserved

Japan Pharmaceutical Excipients Council