日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 アジピン酸
英文名 Adipic Acid

CAS 124-04-9  (link to ChemIDplus)
別名 1,4- Butanedicarboxylic acid, 1,6-Hexanedioic acid
収載公定書  薬添規(
JPE2018) 食添(JSFA-IX) EP
用途 安定(化)剤,崩壊剤,溶解補助剤, pH調整剤

JECFAの評価  (link to JECFA)
一日許容摂取量:0-5 mg/kg (一般的な使用, 1977).許容量Acceptable(芳香に使用,1999)
 

単回投与毒性  (link to ChemIDplus)

動物種

投与経路

LD50

文献

マウス(雄)

経口

1,900 mg/kg

Horn et al.. 1957 1)

マウス

静脈内

680 mg/kg

Horn et al.. 1957 1)

ラット(雄)

腹腔内

275 mg/kg

Horn et al.. 1957 1)

ラット(雄)

経口

940 mg/kg

Litton, Bioneties, 1974 1)

ラット

経口

5,050 mg/kg

Younger Lab., 1975 1)


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
ラット各群雌17-20匹ずつにアジピン酸 0,10,20,40 mg/kgに相当する用量を28日間混餌投与した結果,体重増加に毒性徴候は認められなかった。1) (Lang and Bartsch, 1953)

ラット各群雄18匹ずつにアジピン酸 0,200,400,800 mg/kgに相当する用量を5週間混餌投与した結果,高用量群の体重増加抑制以外に体重増加に変化はみられなかった。1) (Lang and Bartsch, 1953)

ラットにアジピン酸 0,400,800 mg/kgに相当する用量を35週間混餌投与した結果,高用量群では最初の3週間に下痢及び体重増加抑制が認められた。しかし,この変化はその後回復傾向を示し,試験終了時には対照群と投与群の体重増加に差はみられなかった。また,交配の結果,高用量群の妊娠動物において,出生児に異常はみられず,母動物の哺育状態に異常は認められなかった。1) (Lang and Bartsch, 1953)


ラット各群雌雄30匹(雄20匹,雌10匹)ずつにアジピン酸 0,0.1,1,3,5 %を飼料に混入して,2年間投与した結果,3及び5 %群では体重増加抑制が認められた。さらに,5 %群では摂餌量の減少もみられた。生存率は対照群,投与群で差は認められなかった。剖検,病理組織学的検査では諸臓器(甲状腺,肺,心臓,肝臓,脾臓,腎臓,副腎,胃,小腸,大腸,すい臓,骨髄,精巣,卵巣,子宮)に化合物に起因した変化はみられなかった。1) (Horn et al., 1957)


遺伝毒性   (link to CCRISGENETOX)

試験

試験系

濃度

結果

文献

復帰突然変異

ネズミチフス菌 TA98
TA100,TA1535
TA1537,TA1538

直接法及び代謝活性化法
(ラット及びハムスター肝S9)
:667-10000μg/plate

陰性

Longfellow,2)

復帰突然変異

ネズミチフス TA98
TA100,TA1535
TA1537,TA1538

直接法及び代謝活性化法
(ラット肝S9)
:1-5000μg/plate

陰性

清水ら 19853)

復帰突然変異

ネズミチフスTA98
TA100,TA1535
TA1537,TA1538
大腸菌 WP2

直接法及び代謝活性化法
(ラット肝S9)
:0.003-10mg/plate

陰性

Prival et al., 19914)

マウス
リンフォーマtk

マウスリンフォーマ
細胞L5178Y(TK+/TK-)

直接法及び代謝活性化法
(ラット肝S9)
: 974-2000μg/plate

陰性

Longfellow,2)

染色体異常
in vitro

ヒト胎児肺細胞
(WI-38)

2-200μg/mL

陰性

Litton Bionetics,19741)

染色体異常
in vitro

ラット骨髄細胞

経口:2.75, 37.5
375mg/kg/day

陰性

Litton Bionetics,19741)

優性致死

ラット

経口:2.75, 37.5
375mg/kg/day

陰性

Litton Bionetics,19741)


約12週齡のICRマウス雄にアジピン酸 100,2500,5000 mg/kgを単回経口投与し,30分後にネズミチフス菌TA-150,G-46,サッカロミセス菌D3を腹腔内投与した。その後,3時間目に滅菌生理食塩液2mLで腹腔内液を回収した。細菌の突然変異頻度及び酵母の体細胞組み換え頻度を調べた結果,ネズミチフス菌ではいずれの用量群でも頻度増加はみられず,サッカロミセス菌では体細胞組み換え頻度に用量相関性は認められなかった。1) (Litton Bionetics, 1974)

約12週齡のICRマウス雄にアジピン酸 100,2500,5000 mg/kgを5日間連日経口投与し,30分後にネズミチフス菌TA-150,G-46,サッカロミセス菌D3を腹腔内投与した。その後,3時間目に滅菌生理食塩液2mLで腹腔内液を回収した。細菌の突然変異頻度及び酵母の体細胞組み換え頻度を調べた結果,ネズミチフス菌・サッカロミセス菌いずれも有意な頻度の増加は認められなかった。1) (Litton Bionetics, 1974)


がん原性
該当文献なし


生殖発生毒性  (link to DART)
マウス
妊娠マウス各群20-24匹ずつにアジピン酸0,2.6,12.0,56.0,263.0 mg/kgを器官形成期(妊娠6-15日)に投与し,妊娠17日目に剖検を行った結果,母動物の体重・泌尿生殖器,胎児体重,着床数,吸収胚,生存体児数,死亡児数,内臓異常,骨格異常など対照群と投与群で差が認められず,化合物に起因した胚胎児毒性,催奇形性はみられなかった。 1) (Food and Drug Research Labs., Inc., 1973)

ラット
妊娠ラット各群20-24匹ずつにアジピン酸0,2.9,13.0,62.0,288 mg/kgを器官形成期(妊娠6-15日)に投与し,妊娠20日に剖検を行った結果,母動物の体重・泌尿生殖器,胎児体重,着床数,吸収胚,生存体児数,死亡児数,内臓異常,骨格異常など対照群と投与群で差は認められず,化合物に起因した胚胎児毒性,催奇形性はみられなかった。 1) (Food and Drug Research Labs., Inc., 1973)

ハムスター
妊娠ハムスター各群21-24匹ずつにアジピン酸0,2.0,9.5,44.0,205 mg/kgを器官形成期(妊娠6-10日)に投与し,妊娠14日に剖検を行った結果,母動物の体重・泌尿生殖器,胎児体重,着床数,吸収胚,生存体児数,死亡児数,内臓異常,骨格異常など対照群と投与群で差は認められず,化合物に起因した胚胎児毒性,催奇形性はみられなかった。 1) (Food and Drug Research Labs., Inc., 1973)

ウサギ
妊娠ウサギ各群10-14匹ずつにアジピン酸0,2.5,12.0,54.0,250 mg/kgを器官形成期(妊娠6-18日)に投与し,妊娠29日に剖検を行った結果,母動物の体重・泌尿生殖器,胎児体重,着床数,吸収胚,生存体児数,死亡児数,内臓異常,骨格異常など対照群と投与群で差は認められず,化合物に起因した胚胎児毒性,催奇形性はみられなかった。 1) (Food and Drug Research Labs., Inc., 1973)

局所刺激性
ウサギの眼に20 mgを点眼し24時間目に刺激性をDraize法に従い評価した結果,中等度な刺激性が認められた。5)


その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
アジピン酸もしくはナトリウム塩 50 gをヒトに投与した結果,尿へのシュウ酸排泄の増加は認められなかった。1)Kabelitx, 1943)

製薬企業のSpiramycin労働者における気管支喘息2例を以下のように報告する。症状としては,spiramycin原末に触れると咳,息切れ,喘息を訴えていた。3〜4日間仕事から離れていると症状は消失した。Spiramycin液の噴霧・吸引による感作では,2名とも喘息様症状を再現することができたが,Spiramicinで報告されている反応とは異なっていた。更に,1名はアジピン酸液を吸入すると直ちに喘息様症状を発現し,添加剤がSpiramycinと結合すると刺激性の作用は消失した。アジピン酸は通常刺激性を示さない濃度で起こった変化であり,他のヒトでの再現する可能性は否定できない。7)Moscato G. et al., 1984)

ヒト眼への刺激性の閾値は20 mg/cu mであった。6) Krapotkina MA et al., 1981)



参考文献
OECD database (linke to SIDS
)

 1) WHO Food Additives Series No. 12. Adipic acid  (link to WHO DB)
2) Short term test program sponsed by the division of cancer etiology, National Caner Institute, Dr. Davied Longfellow, Project officer, p. Y88
3) 清水 英佑,鈴木 勇司,竹村 望,後藤 純雄,松下 秀鶴 工業化学物質43種類の突然変異原性について, 産業医学 1985: 27: 400-419
4) Mutat. Res. 1991: 260: 321-329 (link to PubMed)
5) """Prehled Prumyslove Toxikologie; Organicke Latky,"" Marhold, J., Prague, Czechoslovakia, Avicenum, 1986 CODEN Reference: -,315,1986 "
6) Krapotkina MA, et al; Gig Truda Prof Zabolevanija 1981; 5: 46-47
7) Clin Allergy 1984; 14: 355-361 (link to PubMed)

Abbreviation

ChemIDplus; ChemIDplus DB in TOXNET, CCRIS;Chemical Carcinogenesis Research Information System , DART; Developmental Toxicology Literature

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