日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 アセトン
英文名 Acetone

CAS 67-64-1  (link to ChemIDplus)
別名 
収載公定書  薬添規(JPE2018) 食添(JSFA-IX) 外原規(2006) USP/NF(28/23) 
用途 可溶(化)剤,溶剤,溶解剤,溶解補助剤

JECFAの評価 (link to JECFA)
暫定評価として、この溶剤の使用は、最小量の残留物(不純物)の結果が期待できるGMP(good manufacturing practice)に従って製造されたものに制限されるべきである。これらの制限内では、残留物はあったとしてもなんら意味ある毒性作用を持つとは考えられない。 1)


単回投与毒性  (link to ChemIDplus)

動物種

投与経路

LD50

LD100

文献

マウス

吸入

-

46000ppm

Schultze, 1932 1)

 

経口

10700mg/kg

-

Smyth et al., 1962 1)
Shell Chemical Co., 1969
1)

 

-

9700mg/kg

-

Spector, 1956 1)

 

静脈内

-

4mL/kg

Walton et al., 1928 1)

 

吸入

-

32000ppm/4h

Smyth et al., 1962 1)
Shell Chemical Co., 1969 1)

ラット

吸入

76mg/m3/4h
50.1mg/m3/8h

-

Pozzani, et al. 1959 3)

ウサギ

経口

5340mg/kg

-

Spector, 1956 1)

 

 

-

5-10mL/kg

Walton et al., 1928 1)

 

静脈内

-

6-8mL/kg

Walton et al., 1028 1)

 

経皮

>20mL/kg

-

Smyth et al., 1962 1)
Shell Chemical Co., 1969
 1)

イヌ

経口

-

8g/kg

Albertoni, 1884 1)




反復投与毒性 (link to TOXLINE)
マウス
1群雌雄各5匹のB6C3F1系マウスに、0,5000,10000,20000,50000又は100000ppm濃度のアセトンを飲料水に混入して14日間自由に摂取させた(夫々0,1250,2500,5000,12500又は25000mg/kg bw/日に相当) 。
対照群と比べて、12500及び25000mg/kg 群では摂水量が減少した。25000mg/kg群では雌雄共に体重増加抑制がみられ、雄の方が著しかった。
12500及び25000mg/kg では雌雄共に腎の相対重量に統計的に有意な増加が見られた。1250,2500 mg/kg群の雄、5000,12500mg/kg群の雌雄及び25000mg/kg 群の雌には、肝の相対重量に有意な変化が観察された。病理組織学的には5000mg/kg群の雄及び12500,25000mg/kg 群の雌雄に、極微ないし軽度の小葉中心性の肝細胞肥大が、25000 mg/kg 群の雄に中等度のそれが認められた。2) (Dietz, 1991)

1群雌雄各10匹のB6C3F1系マウスに、雄では0,1250,2500、5000,10000又は20000ppm濃度の、雌では0,2500,5000,10000,20000又は50000ppm の濃度のアセトンを飲料水に混入して13週間自由に摂取させた(夫々雄では0,313,625,1250,2500又は5000mg/kg bw/日に相当、雌では0,625,1250,2500,5000又は12500mg/kg bw/日に相当)。対照群と比べ、雌の全群で摂水量の減少がみられた。
雌の最高用量の12500mg/kg群では肝、脾の絶対及び相対重量の有意な増加が見られ、極めて軽微な小葉中心性肝細胞肥大が同群の2匹に認められた。
しかし、雄では被験物に関連した病変は見られなかった。無影響量(NOEL)は2500mg/kg bw/日であった2) (Dietz,1991)。

ラット
1群雌雄各5匹のFicher 344/Nラットに、0,5000,10000,20000,50000又は100000ppm 濃度のアセトンを飲料水に混入して14日間自由に摂取させた(夫々0,500,1000,2000,5000又は10000mg/kg bw/日に相当)。2000mg/kg群の雌及び5000、10000mg/kg群の全てにおいて、摂水量が減少したが脱水の徴候は見られなかった。5000mg/kgの雄及び10000mg/kg群の雌雄では体重の減少が見られた。2000及び5000mg/kg 群では雌雄共に肝、腎の相対重量に有意な増加が観察された。更に、5000mg/kg群では精巣の相対重量の増加がみられたが、10000mg/kg 群では見られなかった。組織病理学的には、いずれの投与群においても異常は認められなかった。2) (Dietz, 1991)

1群雌雄各10匹のラットに、0,2500,5000,10000,20000又は50000ppm濃度のアセトンを飲料水に混入して13週間自由に摂取させた(夫々0,250,500,1000,2000又は5000mg/kg bw/日に相当)。
2000mg/kg群の雌及び5000mg/kg群の雄では摂水量が減少したが、脱水の徴候は見られなかった。5000mg/kg群では雌雄共に体重増加抑制が観察された。2000mg/kg群雌,5000mg/kg群雌雄では,腎の相対重量の有意な増加が認められた。ニューロパシーの発症頻度は対照群を含む全ての群の雄に見られたが、2000mg/kg以上の高用量群では頻度も高くかつ重篤であった。
2000mg/kg群及び5000mg/kg 群の雌雄に肝の相対重量増加が見られたが,2000mg/kg未満の用量では相対重量に有意な差は認められなかった。精巣の相対重量の有意な増加は5000mg/kg 群で見られた。
著者は、上記の器官重量の変化はアセトン大量投与における体重の変化を伴っていることから,その解釈は困難で、生物学的な意義はないとみなした。さらに、精巣に対する毒物は典型的に精巣重量を減少させる。
精子の運動性、尾重量及び精巣上体重量の低下及び異常精子の発生頻度の増加もまた5000mg/kg 群でみられた。無影響量(NOEL)は1000mg/kg bw/日であった。2) (Dietz, 1991)

1群雌雄各30匹のSprague-Dawley ラットに90日間、100,500,2500mg/kg bw/日のアセトンを強制経口投与した。中・高用量群の雌では腎絶対重量が増加した。腎、肝、脳の相対重量増加が最高用量群の雌雄に見られた。45日目の雄及び90日目の雌雄の最高用量群では赤血球の有意な増加があった。
病理組織学的な検査では、500mg/kg 群の雄及び2500mg/kg 群の雌雄に尿細管変性と硝子滴沈着の有意な増加が見られた。しかし,投与に起因した変化は,肝及び腎の組織学的検査で認められなかった。無影響量(NOEL)は100mg/kg bw/日であった。2) (Sonawanes, 1986)

ウサギ又はイヌ
ウサギに8mlを5-22日間、またはイヌに8-10mlを8から35日間強制経口投与によって、アルブミン尿、または腎曲細管の上皮壊死が認められた。1)Albertoni and Pisenti, 1887)。

5匹のイヌに1-2.5g/kgのアセトンを9-19日間、毎日強制経口投与することによって、腎尿細管壊死を伴う腎炎がみらえた。1)Poliak, 1925)

遺伝毒性 (link to CCRISGENETOX)

試験

試験系

濃度
μg/plate

結果

文献

復帰突然変異

ネズミチフス菌、TA100

0.1-1000

陰性

Rapson et al.,1980 2)

・・・ibid

ネズミチフス菌
TA98,100,1535,1537

174

陰性

Florin et al., 1980 2)

・・・ibid

ネズミチフス菌
TA98,100

陰性

Florin et al., 1980 2)

・・・ibid

ネズミチフス菌
TA98,100

24mg/plate

陰性

Yamaguchi, 1985 2)

・・・ibid

ネズミチフス菌
TA97,98,100,1535,1537

10000

陰性

McCann et al.,1975 2)

・・・ibid

ネズミチフス菌
TA97,98,100,1535,1537

10000

陰性

Zeiger et al., 19922)

・・・ibid

ネズミチフス菌 TA100

500

陰性

Yamaguchi 1982 2)

rec突然変異

枯草菌

陰性

Kawachi et al.,1980 2)

・・・ibid

枯草菌

陰性

Ishizaki et al. 1979 2)

正突然変異

分裂酵母菌

3.75%

陰性

Abbondandolo et al. 1980 3)

・・・ibid

マウス リンフォーマ
L5178Y TK+/-

0.134-0.421 mol/L

陰性

Amacher et al. 1980 3)

異数性

出芽酵母菌

6.98, 7.41, 7.83%

陽性

Zimmermann et al. 1985 3)

・姉妹染色分体交換

CHO細胞

10μg/ml

陰性

Sasaki et al., 19802)

・・・ibid

CHO細胞

5020μg/ml

陰性

Loveday et al.,1990 2)

・・・ibid

二倍体ヒト繊維芽細胞

5μg/ml

陰性

Sasaki et al., 1980 2)

・・・ibid

ヒトリンパ球

395μg/ml

陰性

Norppa et al., 1983 2)

・・・ibid

ヒト胎児線維芽細胞

陰性

Kawachi et al.,1980 2)

・・・ibid

ハムスター肺線維芽細胞

陰性

Kawachi et al.,1980 2)

染色体異常

CHO細胞

5020μg/ml

陰性

Loveday et al.,1990 2)

・・・ibid

ハムスター肺線維芽細胞

陰性

Kawachi et al.,1980 2)

小核 (in vivo)

マウス抹消赤血球

5-20g/L
飲水混入投与

陰性

NTP, 1991; Dietz et al.,1991 3)

・・・ibid

チャイニーズ ハムスター抹消赤血球

865mg/kg
腹腔内投与

陰性

Basler,1986 3)



がん原性
マウス
60匹の雌マウスの背中の毛を剃り、週3回、447日間(64週間)
アセトンを塗布した結果,局所の乳頭腫、癌腫はみられなかった。1) (van Duuren et al.,1965)


生殖発生毒性  (link to DART)
CD-1マウス雌50例にアセトン 0,3500mg/kgを妊娠6-15日に強制経口投与した。母体毒性(死亡率,体重,一般状態),出生児の生死数,出生時の児体重,生後3日目の淘汰時の一腹体重・生児数を調べた結果,投与群2例で死亡に至る臨床徴候がみられたが,アセトンによるものとは著者は考えなかった。生存例では臨床徴候,体重にも影響はみられなかった。アセトンによる変化 としてはreproductive indexの減少,妊娠期間の延長,出生時体重の減少,出生児数の減少,出生児体重増加の亢進であった。3) (EHRT, 1987)


局所刺激性
ウサギにアセトン1.0mLを剃毛した背部に閉塞することなく塗布した結果,24時間後には刺激性は認められなかった。3) (Smyth et al.,1962)

CD-1マウスにアセトン0.2mLを塗布した結果,表皮のDNA合成,中等度の過形成がみられたことから,軽度な刺激性があるとみなした。3)Iversen et al.,1988)

ヘアレスマウスにアセトン0.1mLを週2回18週間塗布した結果,表皮の過形成がみられた。3)Iversen et al.,1988)

ウサギにアセトン0.005mLを点眼した結果,眼の重度な炎症と角膜壊死が認められた。3) (Carpenter & Smyth,1988; Smyth et al., 1962)

ウサギにアセトン3.9mLを3分間点眼した結果,結膜浮腫が認められた。3) (Larson et al.,1956)



その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見 (link to HSDB)

多くの業種で長期間使用(e.g.2000ppm 15年間吸入)され,幾つかの軽度の中毒例が報告されたが、血液学的あるいは臓器への持続的障害例は報告されていない。1) (Browning, 1965;Rowe & Wolf, 1963;Fassett, 1963)。

高用量の経口投与による肝と腎への可逆性の変化は、アルブミン尿、尿沈渣中の赤血球及び白血球の存在、ウロビリノゲン尿及び血中ビリルビンの増加であった。ヒトでの致死量は約50mLと見積もられている。死因は呼吸の低下によるものである。1)(API Toxicological Reviews, 1955)TLVは1000ppmである。1)Amer.Conf. GOv. Industr. Hygienists, 1969)
数日間以上にわたって15.2gを経口的に摂取した場合、軽度の嗜眠状態を来たす以外、他に異常はない。1)Albertoni, 1884)
ヒトにおける急性中毒は、虚脱及び肝、腎臓への障害である。1) (Sack, 1940;Smith & Mayers, 1944;Harris & Jackson, 1952)
ヒトでは、持続的な皮膚接触による皮膚炎、眼及び鼻粘膜への刺激性が見られた。1)Parmeggiani & Sassi, 1954)
吸入したアセトンの約10%は皮膚から排泄される。1)Parmeggiani & Sassi, 1954)


参考文献
OECD database (link to SIDS
)

1) FAO Nutrition Meetings Report Series 48a, 1970  (link to WHO DB)
2) WHO Food Additives Series 42, 1999
  (link to WHO DB)   
3) Environmental Health Criteria 207, 1998  (link to EHC)


Abbreviation   
ChemIDplus; ChemIDplus DB in TOXNET, CCRIS;Chemical Carcinogenesis Research Information System , DART; Developmental Toxicology Literature

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